2004年 首都圏中学入試の総括と展望 中学受験鉄人会 教務部
中学受験率は過去最高
新指導要領が導入されて2年目を迎えた今年は、2月1日が日曜日であるために、多くのプロテスタント校が入試日程を移動するいわゆる「サンデーショック」の年として、大いに注目されました。首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)の受験者総数は、推定で約44,000名、昨年より約2,500名増加しています。2月1日の出願者総数をみても約51,000名で、約4,000名の増加です。これは「午後入試」の定着による応募者増もありますが、かなりの増加です。今年の6年生の児童数は、少子化傾向の中では珍しく増加した年でしたが(首都圏で約5,300名増加)、その影響よりも、「2002年問題」に象徴される公立校の学力低下への懸念が大きく影響しているものと思われます。多くの保護者にとって深刻な問題であり、中学受験への関心は年々高まっています。
首都圏の6年児童数は、約293,000人ですから、受験率は約15%、来年の児童数は約289,000人で、今年と同じ割合で増加したとすると、受験率は16%台になって、まさに「歴史的転換期」を迎えることが予想されます。
学力低下に抱く保護者の疑問や不安は相当なものです。いくら「最低基準」とはいっても、公立校でそのプラスアルファを望むのは難しいでしょう。中学受験を目指していた受験生がもともと多かった上に、5年生の後半や6年生になってから受験を考えたご家庭も多かったようです。いずれにしても、よりよい教育環境を求める保護者の願いは強く、多くの受験生が強気志向で果敢にチャレンジした入試となりました。
併願校数も過去最高
「サンデーショック」によって、女子の併願パターンや難易度が例年とは大きく変わり、強気志向に一層拍車がかかりました。昨今、男女ともに実力以上の学校を志望する傾向にあり、難関校の応募者増の割合からすると、かなり強気な選択がなされた模様です。併せてブランド志向も強く、いわゆる有名校にも応募者が集中しました。事前に予想されていた通り、厳しい入試だったといえるでしょう。
「1人あたりの平均受験(出願)校数」は、男子が5.9(昨年)から6.0(今年)、女子が5.1(昨年)から5.6(今年)、全体で5.5(昨年)から5.8(今年)と、こちらも過去最高となりました。「午後入試」の定着、1月校出願の増加、人気校の複数回入試の実施がおもな要因ですが、応募者(出願者)総数も、約260,000人と昨年より約25,000人の増加です。
「私学の教育に対する期待」の大きさはふくらむばかりですが、だからといってすべて公立よりも私立がいいというわけではありません。私立でも様々な学校があり、存在する数だけの違いがあります。確かに私学の方が伸びる可能性は高いでしょう。ただし、どの子どもにも合う学校など存在しません。どのような学校がわが子に合うのかを十分に見極めていく必要があります。本当の意味での教育効果が望めるのかどうかが重要です。志望校の選定がわが子にとって重要な意味を持っているということです。
このところ公立校においても改革が進み、来年度からスタートする都立中高一貫校の反響をみても、選択肢が増えつつあり、学校側が選ばれる時代になりました。私学といえども選ばれるに足るだけの教育内容を持つことが求められています。
全体的な志望動向
(1) 千葉、埼玉の1月入試が東京、神奈川を凌ぐ盛り上がりをみせています。1月中の前半と後半の2ブロックに分けた受験が一般的となりました。千葉の芝浦工大柏、専修大松戸、麗澤、埼玉の城北埼玉、独協埼玉、立教新座、浦和明の星女子、大妻嵐山、春日部共栄など、最近の新設校の人気が非常に高く、またこれらに競合する西武文理、栄東、開智などの人気も上昇し、厳しい入試状況です。来年はさらに、大宮開成、淑徳与野、浦和実業の3校が中学を新設する予定なので、埼玉の中学受験熱はさらに高まると思われます。
(2) 難関校へのチャレンジ志向が、ここ数年続いている現象です。これらの学校は、知育面だけではなく、徳育、体育面でもきめの細かい指導が行われ、大学合格実績ももちろん良い学校ですから、人気が高まるのは当然です。今後も強気志向の受験が継続していくものと思われます。
(3) 入試回数を増やす学校が増加し、いろいろな併願パターンが生まれ、2月1日に2校出願しておく「ダブル出願」が増加しました。ただし受験機会が増えても、応募総数には変更のない学校が多く、1回あたりの入試難度は上昇することもあるので注意が必要です。男子校では6校、女子校では36校、共学では25校、合計67校(回)も入試機会が増えました。
(4) 男女とも4教科校の応募者が増え、難度も上昇する学校が増えています。大手塾模擬試験の動向でも明らかですが、男女ともに4教科受験生が圧倒的な割合を占めています(男子で約93%、女子で約80%)。「2科・4科選択入試校」が、今年はまた増えてきました。
(5) 午後入試はあくまでも変則的な入試ですが、その多くが2月1日か2日の早い時期に実施されるため、早く合格を勝ち取っておきたい受験生にとってはありがたい入試の形だといえます。当初は、それほど難度の高くない学校が導入し、受験生を確保する手段という意味合いが強かったのですが、最近は難度の高い学校でも導入されるようになり、ここ数年で急速に増加してきました。
(6) 附属校離れとも言える傾向が見られた時期もありましたが、ここ数年、大学の進学実績が堅調な進学校や、他大学進学志向の強い進学校的な附属校に人気が集中している一方で、男女を問わず、併設大学への内部進学率が比較的高い附属校でも概ね応募者を増やしています。
(7) 国立大付属中も応募者が減少傾向にありましたが、今年は軒並み増加しています。 景気の低迷も影響しているかもしれませんが、学校説明会を実施している学校では、 総合学習の内容の工夫や選択科目の有効活用などの教育内容に関する具体的な説明がなされるようになったことも影響しているようです。男子最難関の筑波大付属駒場の説明会では、「筑駒の教育」が存分に紹介され、評判も大変よく多くの受験生を集めました。 国立大学が独立法人化しますと、文字通り独立した独自の裁量での運営が可能となります。当然、付属校の在り方も見直しが迫られます。各校で独自性を打ち出す動きが出るでしょうから期待が持てます。東京学芸大附属大泉では、2007年以降に国際性を兼ね備えた6年一貫の中等教育学校となる構想が、具体的に検討されているようです。
(8) 首都圏外の寮のある学校の東京会場入試が定着してきています。東京や神奈川の受験生にとっては、遠方の千葉や埼玉に出向いていかなくても入試独特の雰囲気を味わえるので、「慣らし受験」が目的で受験しています。今年も昨年以上の応募があり、全体の応募者総数や1人あたりの併願校数を押し上げている一因にもなっています。ただし、これらの学校の多くは大学の合格実績が堅調な進学校であり、安易な気持ちで受験すると思わぬ結果になりかねないので、くれぐれも慎重で綿密な対策が必要です。
学校の真価が問われる時代に
都立高校の改革の一環として、来年から初の都立中高一貫校として、白鴎高校を母体とする中高一貫6年制学校がスタートします。再来年は、小石川高校、両国高校、都立大学附属高校、九段高校が、2008年からは、北多摩高校、都立武蔵高校、2010年からは、大泉高校、富士高校、三鷹高校、南多摩高校が、同じく都立中高一貫校としてスタートします。
白鴎高校での説明会は昨年10月より断続的に実施され、約2,000世帯の保護者・児童が参加しています。適性検査の問題例が配付されましたが、記述を重視した内容で、あるテーマをもたせた考えさせる問題で、それなりの訓練が必要な問題レベルです。
千葉でも、県立千葉高校を中高一貫校とする実施計画が進行中です。
2003年 首都圏中学入試状況 速報
取り急ぎ概況をご報告いたします。今年度受験状況詳細及び中学受験鉄人会会員合格校につきましては現在取りまとめ中ですので後日ご報告させて頂きます。
首都圏の私立中学校入試の今年度の各校の志願状況を見ると、共学校はほぼ前年並みですが、女子校で志願者数の伸びている学校が目立ちます。小学6年生の数が減少していることを考え合わせると、やはり私立中志向はますます高まっていると推測できます。
首都圏の私立中学の志願者数(複数の受験日を設けている学校については第1回目の志願者のみ)を昨年度と比べると、女子校では立教女学院が50%増、共立女子が40%増、白百合学園、調布、豊島岡女子学園、鴎友学園女子が20〜30%増など、志願者数が大幅に伸びたところが多くなっています。新設の浦和明の星女子は志願倍率が14・5倍になっています。男子校では城北埼玉が49%増、攻玉社は29%増などとなっています。共学校では青山学院の男子が35%増、女子が36%増となっています。
私立中学の受験者が増えた大きな要因には、今年度から中学で導入された新学習指導要領によって授業時間や学習内容が削減され、公立中学では十分な学力がつかず、大学入試で不利なるのではないかと心配する保護者が増えた点があげられます。その為、私立校の中でも特色ある独自のカリキュラムを編成し、高校2年生までにすべての学習過程を終えて受験準備に入る中高一貫校など、進学に向け学習指導態勢の整った学校に人気が集まっている状況が見られます。
2002年 首都圏中学入試状況/分析/考察
2002年首都圏中学入試も終了しました。少子化と不況の中で向かえた、今年の入試ですが、まず、特筆したいのが、1999年についに4万人を割り込んだ中学受験者数が2000年入試では4万人台を再び超え、さらに今年の入試でもそれをキープし、また中学受験率も最高の13.9%にまで上昇したことです。受験生にとっても各中学校にとっても厳しい選択がなされた入試だったという事が言えます。「今ほど学校が行う教育の中身が問われている時代はない!」といっても過言ではないでしょう。今年度の入試を振り返りながら「子供のより良い志望校合格のために何が一番必要か」という事を考えてみたいと思います。
まず今年の中学入試を語るに欠かせない存在・・<2002年4月に本格実施される新しい学習指導要領>があります。その存在が中学入試そのものの問題(入試改革?) あるいは学校側からにとってのそれに対する現実的な許容(中高一貫教育のカリキュラム変更?) にどのように係わり、そしてどのような影響を与えるか?・・それらを探り、考察する事がまず我々の取り組むべきテーマの一歩だと思います。
1.昨今の中学入試において、合格最低点がこのところ低下しているのが目立っています。20年ほど前であれば、各進学塾であれば「7割近くとらなければ合格はおぼつかない」という指導をしていまたが、今では、『大部分の学校が6割とれれば合格ライン』という指導に変わってきています。学校によってはそれこそ難問・奇問と言われても仕方のない問題から徐々にどちらかというと『基礎』『基本』を重視しながら、その応用としてその場で考えさせ、判断させるような問題を織り交ぜながら解かせる形式が主流になっています。たとえば2002年桜蔭算数.? (1)(2)(計算と1行題)を除くとその他はほとんど規則性の問題がみられます。(立体図形のその個数とそれに色分けされた面積の合計との規則性、1つの周期の中のその部分・部分の有機的つながりを発見させる規則性、グループに分けた中の一定の方向性を見出す規則性・・)それらの問題を解く対策としてはとにかくその規則性の意味合い、ルールを発見するために手を動かして調べる事。そして調べて、条件を増やし、流れの中でその規則性を見つけるという作業。それらのパターン練習・トレーニングが必要と思われます。算数に関して全体として各学校の入試問題を見るかぎり言える事は総括として<俗にいう2002年問題>に弾力的に対応しつつも、例年に倣いおのおの各学校独自の工夫を凝らした問題、定番・パターン問題が数多く出題されたように思われます。次に国語について言えばやはり記述!2002年開成の「キリンの話」は、<主人公の少年の中にあるコンプレックスを解放させる象徴としてのキリン>のその捉え方、文章を正しく読みこなす読解力。そして「少年にとってキリンとは?」「少年がその後、都会の星を美しいと感じるようになった心情の変化」を有機的に結び付け、それらをまとめる記述力が要求されると思われます。では最初に提起した各中学校合格最低点が低くなったことと実際の問題の難易度との整合性はどのように考えたらよいでしょうか?長年見てきた立場から言わせて貰いますと生徒個々の解く力云々というよりもその問題に対する捉え方・構え方、学校の先生の意図する問題構成に対する処し方、時代の状況の変化にアグレッシブに対応する出題傾向等にあるように思われます。
2.ではそれらを受け止める学校側の体制はどうでしょうか?各学校とも[2002年.学習指導要領改訂]に対しては率直に受け止め、弾力的に対応しつつ、それぞれ独自の工夫を凝らしたカリキュラム体制を構築されているように思われます。例えば「我々は真のゆとりの教育をめざす!」とはっきりと明言された浅野中学の淡路先生。「週休2日はとらない。6時限×6日間体制を維持する。」「基本的な(勉強・クラブ活動等)生活習慣の指導・確立・徹底。その過程の中で《自己啓発》・自分自身にとっての本物の価値を見いだす事が出来る、そしてそれを自分の頭で考える事の出来る人間を育成したい」とのご見解。また、「5日制対策として2期制にし、70分×5時限授業体制の中で個性あるさまざまな生徒にアグレッシブに対応し、ていねいな指導を心がけたい!」と力強く語る公文国際の石黒先生など学校現場の熱心な先生の声が聞こえてきます。一方多くのミッション系の学校がそうであるように昔から週休2日体制をとっている学校はどうでしょうか?「わが校は、以前より5日制をとっています。土曜日は自由選択として特別講座を実施している。特に英語教育には力を入れていて、国際色豊かにグローバルな視点を持って物事を考え、そして情報収集し、自分でまとめプレゼンすることの出来る子供を育成する様、心がけ指導している。」と熱く語る鎌倉女学院の錦先生。横浜双葉の千葉先生は「5日体制をとってはいるが45分×7時限授業体制できめ細かくていねいな指導を実践しています。」と熱心にお話されていました。毎回いろいろな私立中学校の現場の先生にお話をお伺いすると、その熱心さとひたむきさ<情熱>を感じそしてそれを具体化するための工夫された学校独自の建学の精神に基づいたカリキュラム体制を堅持しているように思われます。