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イメージ力を鍛えると国語の偏差値は飛躍的に上がる!

第2回 物語/書き抜き問題について

山本講師(鉄人会専任スーパープロ家庭教師)

 

 今回は物語の長文問題、特に書き抜き問題に焦点を当てて解説をします。
 まず、次の文章は『あすなろ物語』(井上靖)の一場面ですが、前回お話しした「イメージトレーニング」の要領でリアルな映像を浮かべながら、スピードも意識しつつ読んでみましょう。できるだけ、2分以内で読めるように心がけて下さい。

 二度目に鮎太(あゆた)が一人で伊豆屋の中庭に立った時は、どこかの部屋からの宴会(えんかい)のさんざめきが川瀬(かわせ)の音に混じってにぎやかに聞こえていた。
 中庭をぐるりとまわって行った。八畳の部屋には、なるほど、小父ちゃんとあまっこがいた。小父ちゃんのほうは何となく見覚えがある感じだったが、少女の方は初めてだった。便所の横手の植込(うえこみ)のかげから鮎太はしばらく二人の様子をうかがっていた。
 鮎太は、意気込(いきご)んでは来たものの、植込のかげから、明るい電灯の光の射(さ)している中庭へと自分の体をさらすことは躊躇(ちゅうちょ)された。手紙を渡す当の男の人より、彼(かれ)の横で同じように寝そべって雑誌を読んでいる自分よりも一つか二つ年下の女の子の存在の方が邪魔(じゃま)だった。赤いきれいな着物を着て、彼女は寝たまま膝(ひざ)から下の脚(あし)を二本ともはね上げていたが、それが、その女の子をひどく活発に見せていた。時々少女は顔を上げて、兄らしい男の方へ何か喋(しゃべ)っては笑いかけていたが、いかにも都会の少女しか持っていない怜悧(れいり)さがその美しい顔にはあふれていた。
 鮎太は十分か十五分、そこに立っていた。?よほどこのまま帰ってしまおうと思ったが、冴子(さえこ)の顔を思い出すと、それもできなかった。
 鮎太は犬が彼が立っている場所とは反対の方に姿を見せた時、それを機会に植込から姿を出した。縁側(えんがわ)は開け拡(ひろ)げてあった。
「お姉さんがこれを寄越(よこ)しました」
 いきなり鮎太はそう言って手紙を縁側に置いた。
 男が黙って立ち上がって来た時、鮎太はこの男が、時々村の禅寺(ぜんでら)へ遊びに行く東京の大学生であることをおもい出した。この春も、彼は一か月近く伊豆屋に泊(とま)っていた。大変な勉強家だといううわさだった。鮎太たちはこの男の四角な帽子(ぼうし)がめずらしくて、「大学生、大学生」と口々に言いながら、彼が村を引き上げていく時、馬車の乗馬まで背後からついて行ったものである。
 男は頭を坊主(ぼうず)刈りにし、肩の張った大きい体を持っていた。彼は手紙を取り上げると、部屋の隅(すみ)の机の上に置き、
「君、何年生?」
と言った。
「六年生です」
「蔵(くら)の中におばあさんと住んでいるの?」
「そうです」
鮎太はこの大学生が自分のことを知っているのが不思議だった。
「おすわり」
 一刻も早くこの場所から退散したかったが、鮎太は男からそう言われると、縁側に腰を降ろした。鮎太は棒縞(ぼうじま)の着物と、縄(なわ)のような帯と、先刻川を渡る時濡(ぬ)れて、砂ぼこりをくっつけてよごれているわら草履(ぞうり)が気になった。
「お菓子(かし)あるだろう」
 大学生が言うと、少女はきれいな半紙の上にカステラを二切れ載(の)せて持ってきた。それを縁側に置く時、彼女は意味のない笑いを鮎太の方へ見せた。?たまりかねて、
「ぼく、帰ります」
 鮎太が言うと、
「そう、そこまで送って行って上げる」
大学生は立ち上がると、縁側から降りて、庭下駄をはいた。少女は器用にカステラを紙に包むと、鮎太の方へ差し出した。
 鮎太にとっては、それは妙(みょう)に脆弱(ぜいじゃく)な手応(てごた)えのない紙包みだった。彼はそれをこわれないようにそっと手につかむと、大学生の背後について歩き出した。
 今度は川を渡る必要はなかった。中庭から明るい玄関の方へまわり、そこからつり橋の方へ出た。つり橋を渡ると、道は少しの間川に沿って走っていった。
「君、六年生なら、来年は中学へ行くんだろう」
「そうです」
「勉強しないと駄目(だめ)だな」
「??」
「都会の学校は難しいよ。勉強している?」
 鮎太は、勉強はしていなかったが、黙って大学生の方へうなずいてみせた。急に自分が大人扱いされているような変な気がした。
「人より二倍勉強するんだな。二倍勉強すれば二倍だけ出来るようになる。朝起きても学校へ行くまで勉強。学校から帰っても、また勉強。??そうすりゃあ、どこへだって入れる。」
 大学生はほとんど独り言を言っているような調子で喋っていた。
「君、勉強するってことは、なかなか大変だよ。遊びたい気持ちに勝たなければ駄目、克己(こっき)って言葉知っている?」
「知っています」
「自分に克(か)って机に向かうんだな。入試試験ばかりではない。人間一生そうでなければいけない」
 鮎太は、この時、何か知らないが生まれて初めてのものが、自分の心に流れ込んで来たのを感じた。今まで夢にも考えたことのなかった明るいような、そのまた反対に暗いような、重いどろどろした流れのようなものが、心の全面にすきまなく非常に確実な速度と拡がり方で流れ込んで来るのを感じた。不思議な陶酔(とうすい)だった。

 いかがでしょうか。登場人物(鮎太、大学生、少女)、情景(伊豆屋及びその周辺)についてリアルな映像が浮かびましたか?川瀬の音、着物の色、カステラの手触り...などは感じられましたか?
活字の世界と現実の世界との隔たりが狭まれば狭まるほど、文章の理解度は深まってゆきます。一度目でうまくイメージできない場合は、もう一度読んでみて下さい。

では、これから設問にはいります。

【問1】下線部?について
(1) 同じ気持ちを表現している部分を本文中より、18字ちょうどで抜き出しなさい。
(2)下線部?の理由について、本文中より一文を抜き出して初めの3字と終わりの3字を答えなさい。(句読点は含みません)     ⇒  □ □ □  〜  □ □ □  から。

(解説)
(1) について解説します。
まず、「よほどこのまま帰ってしまおうと思った」ときの鮎太の様子(イメージ)をありありと思い浮かべて下さい。居心地の悪さを感じ、いたたまれずに困惑した表情を浮かべた鮎太の姿が目の前に現れてきましたか?次に、鮎太の気持ちを表現した部分なので、「鮎太が.....思う、.....したい。」などの言い回しに印をつけていって下さい。そして、印をつけた部分がイメージどおりか注意して下さい。そうすると、下線部から19行あとに「一刻も早くこの場所から退散したかった」とあり、イメージどおり同じ気持ちを表現していることがわかります。字数もちょうど18字となります。
正解は  一刻も早くこの場所から退散したかった   となります。

(2)について解説します。
  理由をきかれているので、下線部の前後に注目しましょう。すると、直前で少女のことが詳しく表現されており、下線部より4行もどると「女の子の存在のほうが邪魔だった。」とマイナスの表現があります。下線部?はマイナスの気持ちであり、マイナスの結果(気持ち)はマイナスの原因(理由) から引き起こされることから「手紙を渡す  ..... 邪魔だった。」の一文が理由に該当することがわかります。

 正解は 手紙を〜だった から。  となります。 

【問2】下線部?の理由について、次の空欄に当てはまるように本文中より適当な言葉を抜き出して答えなさい。
  女の子はァ□□(2字)の少女独特のィ□□□(3字)を持っていて、自分とは違いゥ□□□□□□□□(8字)をェ□□(2字)いたので劣等感をもってしまったから。

(解説)
上記文章より、女の子の詳細について描かれているところを探せばよいことがわかります。本文中最初からちょうど8行目〜11行目にかけて描写されているので、この4行の文章の中から上記文章の空欄にあてはまることばを抜き出してゆきましょう。括弧内の字数と自然な文章になるか注意して選べば必ずできるはずです。

  正解は  ァ都会、ィ怜悧さ、ゥ赤いきれいな着物、ェ着て  となります。

(飛躍アドバイス)
書き抜き問題では、おもに?部分抜き出し?一文抜き出し?文章当てはめ型の三種類あります。問1は?と?、問2は?に該当します。基本的に「いかに迅速かつ的確に本文中から答えを探し出せるか」なので、下線部の前後を中心に答えになりそうな箇所(同じイメージ・言い回し、原因と結果などの関係)に素早く印をつける癖を身につけましょう。国語は特に日頃の習慣を改善できるかどうかが実力の伸び具合を左右しやすい科目といえるのです。

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