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イメージ力を鍛えると国語の偏差値は飛躍的に上がる!

第3回 物語/つなぎ言葉・指示語について

 

 今回は物語の長文問題、特につなぎ言葉・指示語に焦点を当てて解説をします。
まず、次の文章は『銃口』(三浦綾子)の一場面ですが、昭和初期の小学校の風景が目の前に広がるように意識しながら読んでみてください。制限時間は2分です。

 その朝、四年二組は国語の勉強をしていた。黒板には、「第三 横浜」と白墨(はくぼく)で書かれてある。今、生徒たちは声をそろえて斉読(せいどく)していた。
「横浜は東京の西南八里(り)半の所にある一大貿易港にして、商船の出入り絶(た)ゆる時なし・・・・・」
一大貿易港と読むところで、みんなの語調が乱れた。
今日初めて習う字なのだ。
「よし、うまいぞ。もう一読繰(く)り返して読もうか」
坂部(さかべ)先生が言った。と、その時、先生は何を思ったか、大股(おおまた)で教壇(きょうだん)を降りると教室の戸を開けて、廊下(ろうか)に顔を出した。みんなは何ごとかと、一斉(いっせい)に廊下の方を見た。が、廊下側の窓は下の二段がくもりガラスになっていて、廊下の様子がわからない。
「入んなさい。何も遠慮(えんりょ)することはない」
そう言う先生の声が聞こえたかと思うと、先生に背を押されて入ってきた女の子がいた。地味な花模様の綿入れの袖(そで)なしを着た女の子のお下げ髪(がみ)がかすかに揺(ゆ)れている。女の子は顔を両手で覆(おお)ってしゃくり上げていた。
  「なあんだ、遅(おく)れて来たのか」
  誰かが言った。坂部先生は不意に厳(きび)しい顔をして、声のした方を見た。みんながしゅんとした。竜太は、女の子が泣きながら入ってきたのを見て、動悸(どうき)した。
  (あ、中原芳子(よしこ)だ)
  と思った。中原芳子は、始業式の次の日に炭鉱の街夕張(ゆうばり)から転校してきたばかりの生徒だった。転校の時は、たいてい親がついて来るものだが、芳子は一人で学校に来た。先生の話では、父親が病気になり、母が忙(いそが)しくて芳子一人でやって来たと言い、
  「どうだ、偉(えら)いだろう」
  と、芳子の頭を撫(な)でたのだった。1.それから半月とたっていない。竜太は、女生徒とは余り口を利(き)かなかったから、芳子のことなど何も知らなかった。1今朝こんなことがあった。洗面所で歯を磨(みが)いている時、裏口で聞き馴(な)れない声がした。すぐ傍(そば)にいた竜太が戸を開けると、何とそこに芳子が立っていて、藁苞(わらづと)の納豆(なっとう)を幾本か入れた竹籠(たけかご)を下げていた。
  「納豆いりませんか」
  芳子は顔を上げずに言った。竜太はあわてて、
  「お母さん、納豆だと」
と、台所の母を呼んだ。白いカッポウ着でぬれた手を拭(ふ)きながら、キクエは顔を出して、
  「あら、かわいい納豆屋さんね。あなた何年生?」
  「四年生」
  「まあ!四年生!どこの学校?」
  「大栄小学校」
  「じゃ、うちの竜太と同じ学校ね。うちは納豆が好きだから、三つもらうわ。また来てね」
  と、やさしく応対したのだった。納豆を三本キクエに渡す時、芳子は初めて顔を上げて、にっと笑った。その目と竜太の視線が合った。
  竜太はあわててうつむいた。それが今朝のことだった。あの時竜太は起きたばかりだったから、確か六時半頃だった。
  あんなに早く起きていたのに、芳子はなぜ遅刻したのか。納豆売りをしていて、八時までに来ることができなかったのではないか。竜太はなぜか、芳子の遅刻が自分の責任のような気がした。
  坂部先生は前から四番目の芳子の席に座らせ、教壇に戻ると、みんなを見まわして言った。
  「今、なんだ遅れて来たのか、と言った者がいるな」
  みんなは互(たが)いに顔を見合わせた。
  「2.そう言った者は、遅れることは悪いと思って言ったんだな。みんなに言っておくがな、遅刻は悪いと誰が決めたんだ?芳子が一体朝何時に起きるか、知ってるか。知ってる者手を上げろ」
  誰も手を上げない。
  「じゃ聞く。楠夫(くすお)、おまえは何時に起きる?」
  「はい、七時・・・・・ぐらいです」
  「七時に起きる者、手を上げろ」
七、八人の手が上がった。
  「浅田なんか、学校のすぐ傍だから、七時半に起きるって、この間威張(いば)ってたな」
  浅田はがばと机に伏せ、額を打って、
  「あ、痛(いて)え!」
  と叫んだ。みんなが笑った。先生もちょっと笑って、
  「ま、そこが浅田のいいところだ。2芳子は、毎朝五時前に起きるんだ。起きたら顔を洗って、ご飯の用意をして働きに行くお母さんに手伝って、弁当をつくって、病気のお父さんの顔を拭(ふ)いて、3前の日に仕入れておいた納豆を手籠に入れて、売りに行くんだ。納豆をなるべく全部売って帰らないと、芳子は心配なんだ。納豆は売れる日もある、売れない日もある。早く売れるとご飯を食べる暇(ひま)があるが、売れない日は腹を空(す)かしたまま学校に来る・・・・・」
坂部先生の声が途切れた。みんな先生のほうを見つめている。竜太も息を殺して見つめている。先生の口がひくひくとふるえていた。

いかがですか、登場人物の先生や生徒達の会話や情景がリアルにイメージされましたか?
では、イメージが残存しているうちに早速設問にはいってみましょう。

〔問1〕
空欄13にあてはまる言葉を下記ア〜クより一つずつ選んで答えなさい。
ア.それから イ.また ウ.ところが エ.だから オ.ところで  カ.つまり キ.あるいは ク.ただし

【解説】
1、1の直前には「芳子のことなど何も知らなかった」とあり、1の直後からは自宅で芳子と出会った内容のことが書かれてあり、直前と直後は逆の内容なので1には逆接のつなぎ言葉「ところが」が入ります。2の前から後にかけては浅田のことから芳子のことへと話題が変わっているので2には転換のつなぎ言葉「ところで」が入ります。3の直後では芳子の直前の行動を付け加えて説明しているので3には添加のつなぎ言葉「それから」が入ります。したがって、正解は 1−ウ、2−オ、3−アとなります。ちなみに、イは並立、エは順接、カは説明(要約)、キは選択、クは説明(補足)となります。

なお、つなぎ言葉の種類は下記の通りです。

1、 順接...前の事柄が理由や原因となり、その当然の結果や結論が後にくる。
(だから、したがって、それで、そこで、すると、など)
2、 逆接...前の事柄と逆になる事柄や食い違う事柄が後にくる。
(しかし、だが、ところが、けれども、でも、が、など)
3、 並立...前の事柄と後の事柄を対等に並べる。
(また、および、ならびに、など)
4、 添加...前の事柄に後の事柄を付け加える。
(そして、さらに、そのうえ、しかも、など)
5、 選択...前の事柄と後の事柄のどちらかを選ぶ。
(または、あるいは、それとも、もしくは、など)
6、 転換...前の事柄の話題を変える。
(さて、では、ところで、ときに、それでは、など)
7、 説明...前の事柄を言い換えたり、補ったり、例を示したり、理由を述べたりしてくわしく説明する。
(1)換言・要約...前の事柄を言い換えたり、まとめたりする。
(つまり、すなわち、要するに、など)
(2)補足...前の事柄を補ったり、条件などを付け加える。
(ただし、ちなみに、もっとも、なお、など)
(3)例示・比喩...前の事柄に対して例を挙げたり、別のものに例えて説明する。
(たとえば、いわば、など)
(4)理由...前の事柄の理由を説明する。
(なぜなら、というのは、など)

《飛躍アドバイス》
つなぎ言葉についてはまず、直前と直後の文章関係を正確に把握し、7種類(順接・逆接・並立・添加・選択・転換・説明)のうち最適な言葉を当てはめてゆきます。
初めに逆接かそうでないかを判別したほうが分かりやすいでしょう。
7種類のつなぎ言葉については学習により必要最低限の知識を身につけておきましょう。

〔問2〕
(1) 傍線部1.「それ」が指す内容を最もよく表す一文を抜き出して、初めの5文字を答えなさい。
(2) 傍線部2.「そう」が表している部分を本文中より抜き出して答えなさい。

【解説】
(1) 傍線部1.「それ」は直後の「半月とたっていない。」の表現からわかるように時間を示しています。したがって、傍線部1.の3行前までたどり、「転校の時は、....一人で学校に来た。」の一文が該当します。正解は 転校の時は となります。
(2) 傍線部2.「そう」が示すのは発言の内容であり、2行前の坂部先生の会話文「今、なんだ遅れて来たのか、と言った者がいるな」の中にあります。このうち、下線部分が該当します。
  正解は なんだ遅れて来たのか となります。
実際に「2.そう言った者は、遅れることは悪いと思って言ったんだな。」の『2.そう』の代わりに答えの内容を当てはめると、「なんだ遅れて来たのか(と)言った者は、遅れることは悪いと思って言ったんだな。」となり自然な文章となります。

《飛躍アドバイス》
指示語については指示内容が何なのか(時間、場所、会話、人物など)把握した上で、直前部分を探せば、答えが見つかることが多いといえます。
「一文を抜き出しなさい。」でなく、「表わしている部分を抜き出しなさい。」という場合は特に余計な部分は排除して指示部分のみを答えることが重要です。
抜き出した部分を実際の指示語の部分に当てはめてみて、自然な文章になっているかどうかも確かめてみましょう。

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