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イメージ力を鍛えると国語の偏差値は飛躍的に上がる!

第10回 説明文/選択式問題について

山本講師(中学受験鉄人会スーパープロ家庭教師)

  今回は説明文の選択式問題について学習します。選択式問題では、一見すると正誤の判断がつかない問題が多くなっており、日頃から正しい選択肢と誤った選択肢を見極めるための明確な判断基準つまり「ものさし」を作り上げておく必要があります。
そして、常に「ものさし」を使って解く練習を積み重ねることが上達への最短ルートだといえます。

 では、早速次の文章を読んでみましょう。毎日の生活の中で避けては通れない、人間として感じる心の痛みについて書かれていますので自分自身の体験を振り返りながら読み進めて下さい。出典は吉野源三郎著『私はどう生きるか』です。

 僕たちは、人間として生きて行く途中で、子供は子供なりに、また、大人は大人なりに、いろいろ悲しいことや、つらいことや、苦しいことに出会う。もちろん、それは、だれにとっても、けっして望ましいことではない。しかし、こうして、悲しいことや、つらいことや、苦しいことに出会うおかげで、僕たちは、1.人間が本来どういうものであるかということを知るのだ。

 心に感じる苦しみや痛さだけではない。健康で、体に何の故障も感じなければ、僕たちは、心臓とか胃とか腸とか、いろいろな内臓が体の中にあって、大事な役割をつとめてくれているということを、ほとんど気づかずに暮らしている。ところが、体に故障が起きて、どうきが激しくなるとか、おなかが痛みだすとかすると、はじめて僕たちは、自分の内臓のことを考え、体に故障のできたことを知る。体に痛みを感じたり、苦しくなったりするのは、故障ができたからだけれど、逆に、僕たちがそれに気づくのは、苦痛のおかげなのだ。

 じっさい、虫歯なんかでも、少しも痛まないでどんどん(注)うろが大きくなっていくものは、痛むものよりも、つい手当てが遅れがちになるのではないか。だから、体の痛みは、だれだってご免こうむりたいものにちがいないけれど、この意味では、僕たちにとってありがたいもの、なくてはならないものなのだ。

 同じように、心に感じる苦しみやつらさは、人間が人間としてほんとうの状態にいないことから生じて、そのことを僕たちに知らせてくれるものだ。そして、僕たちは、その苦痛のおかげで、人間が本来どういうものであるべきかということを、しっかりと心にとらえることができる。

 お互いに愛し合い、お互いに好意を尽くし合って生きて行くべきものなのに、憎み合ったり、敵対し合ったりすることがあるから、人間はそのことを不幸と感じ、そのために苦しむのだ。

 人間が、こういう不幸を感じたり、こういう苦痛を覚えたりするということは、人間がもともと憎み合ったり敵対し合ったりすべきものではないからだ。

 もっとも、ただ苦痛を感じるというだけならば、それはむろん、人間に限ったことではない。犬や猫でも、けがをすれば涙をこぼすし、寂しくなると悲しそうに鳴く。体の痛みや、飢えや、のどのかわきにかけては、人間もほかの動物も、たしかに変わりがない。しかし、苦痛がただそれだけならば、人間のほんとうの人間らしさは現れない。人間のほんとうの人間らしさを、僕たちに知らせてくれるのは、同じ苦痛の中でも、2.人間だけが感じる人間らしい苦痛なのだ。

 体が傷ついているのでもなく、体が飢えているのでもなく、しかも、傷つき、飢えかわくということが、人間にはある。ひとすじに希望をつないでいたことがむざんに打ち砕かれれば、僕たちの心は、目に見えない血を流して傷つく。優しい愛情を受けることなしに暮らしていれば、僕たちの心は、やがて耐えがたいかわきを覚えてくる。

 しかし、そういう苦しみの中でも、一番深く僕たちの心に突き入り、僕たちの目からいちばんつらい涙を絞りだすものは、自分が取り返しのつかないあやまちを犯してしまったという意識だ。自分の行動をふり返ってみて、損得からではなく、道徳的な判断から、「しまった。」と考えるほどつらいことは、おそらくほかにはないだろうと思う。

 そうだ。自分自身そう認めることは、ほんとうにつらい。だから、たいていの人は、なんとかいいわけを考えて、自分でそう認めまいとする。しかし、自分が誤っていた場合に、それを人間らしく認め、そのために苦しむということは、それこそ、天地の間で、ただ人間だけができることなのだ。人間が、元来、なにが正しいかを知り、それに基づいて、自分の行動を自分で決定する力を持っているのでなかったら、3.自分のしてしまったことについて反省し、その誤りを悔いるということは、およそ無意味なことではないか。僕たちが、後悔の思いに打たれるというのは、自分はそうでなく行動することもできたのに、と考えるからだ。それだけの能力が自分にあったのに、と考えるからだ。正しい理性の声に従って行動するだけの力が、もし僕たちにないのだったら、なんで後悔の苦しみなんか味わうことがあろう。

 (注)うろ ....中がからになっている所。

 いかがでしょうか。説明文でありながらも身近な体験を手がかりとしやすい内容ですので、リアルなイメージは浮かべやすかったのではないでしょうか。
では、早速設問に取りかかりましょう。

【問1】下線部1.「人間が本来どういうものであるか」とありますが、筆者は「人間は本来どういうもの」と考えているでしょうか。最も適当なものを一つ選び、その記号で答えなさい。
A、人間はお互いに憎み合ったり、敵対しあったりしてしまうものである。
B、人間は犬や猫と同じように体の痛みや、飢えやのどのかわきを覚えるものである。
C、人間は何が正しいかを理解した上で、自分の行動を自分で決定できるものである。
D、人間はお互いに愛し合い、好意を尽くし合って生きていくべきものである。
E、人間は動物と違い、体が健康というだけでは生きてゆけないものである。

【問1について】
 まずは問題文をしっかり読みましょう。「人間がどういうものか」ではなくて、「人間が本来どういうものか」つまり「本来」という言葉に注目です。さらに、「最も適当なもの」という言葉にも要注意です。これは正誤を判断するのではなく、選択肢の中でも一番ふさわしいものを選び抜きなさいということです。
 では最初に明らかに誤っているものを見つけます。Aは明らかに違います。本文中には 「人間がもともと憎み合ったり敵対し合ったりすべきものではない。」と書かれています。  次に問題文の「本来」という言葉から「現状は...だが、もともとは...だった。」というニュアンスが読み取れるので、BとEは当たり前すぎてはずれることになります。そうすると残りはCとDになりますが、ここで本文中下線部1.の前後をよく見てみましょう。 「悲しいことや、つらいことや、苦しいことに出会うおかげで、僕たちは、1.人間が本来どういうものであるかということを知るのだ。」の「おかげで」に注目すれば「悲しいことや、つらいことや、苦しいことに出会う」ことが原因となって「下線部1.ということを知る」結果になるわけですから文脈からすればCははずれることになります。
 したがって、正解はDとなります。

【問2】 下線部2.「人間だけが感じる人間らしい苦痛」について、当てはまらないものを1つ選び、その記号で答えなさい。
A、友達を傷つけることを言ってしまって、「しまった」と思う気持ち。
B、約束していたことを裏切られて、ショックを受けた。
C、暗い夜道を一人で帰っていると、やりきれないほどの寂しさを感じる。
D、頼りにしていた家族を亡くして以来、言いようのない孤独感におそわれる。
E、親友とけんかをしてしまい、お互いに口もきかなくなり、とてもつらい。

【問2について】
 この問題は正誤問題ですが、誤っている選択肢を答えるように注意しましょう。下線部2.の前後、とくに2、3行前の「...人間もほかの動物も、たしかに変わりがない。」という表現につながる一連の文章をよく見ると「...犬や猫でも、けがをすれば涙をこぼすし、寂しくなると悲しそうに鳴く。」という表現が見つかります。つまり、犬や猫などの動物でも人間と同様に寂しさは感じるということなので、選択肢Cで「寂しさを感じる」の部分が矛盾しています。
 したがって、正解はCとなります。

【問3】 下線部3.「自分のしてしまったことについて反省し、その誤りを悔いる」とありますが、なぜ人間は他の動物と違い、「反省し、その誤りを悔いる」ことをするのでしょうか。 当てはまらないものを一つ選び、その記号で答えなさい。
A、人間は何が正しいかを理解した上で、自分の行動を選ぶことができるから。
B、人間は他の動物と違い、自分の行動を振り返ることができるから。
C、人間は体の苦痛だけではなく、精神的な苦痛も感じる生きものだから。
D、人間は損得だけではなく、道徳的な判断をすることができるから。
E、人間は他の動物と違い、誤りを認め反省することができるから。

【問3について】
 問2と同様に正誤問題で、誤りの選択肢を見つける問題です。AからEまで特に本文の内容とは矛盾していません。ただし、問題できかれているのは「人間が反省し、その誤りを悔いることをする」理由です。この点から考えれば、選択肢Eは「人間が反省し、その誤りを悔いることをする」内容を単に言い換えているに過ぎず、理由とはならず、不適切です。
 したがって、正解はEとなります。

飛躍アドバイス

 まず、設問をよく読んで趣旨をしっかり把握しましょう。次に、設問箇所の前後の文脈をよく理解しましょう。これで準備OKです。選択式の解法の基本は消去法です。誤っている選択肢をどんどん消してゆきましょう。誤った選択肢の特徴は、1.オーバーな表現であること2.文中の記述にないか矛盾するものだということです。消去されたあと、選択肢が二つ残ることが多いといえます。さらに、選択肢の文自体が長いときは、各選択肢の末尾表現のみで比較した方が、違いが明確になり、判断のスピードもアップします。初めから各選択肢全文を読んでいると、時間もかかり、色んな情報が目に入ってしまい、逆に判断を迷わせる結果となってしまうことが多いので注意しましょう。

 選択問題は悪い言い方をすれば、すんなりとは正解できないように巧妙に作られており、「本文に書いてあることと矛盾しないか?」とか「もっともらしい言い方をしているが、何か落とし穴がないだろうか?」などと神経を張りめぐらせて、ささいな表現に対しても敏感に反応する姿勢が望まれます。そのためにも、ある一定量以上の練習問題をこなすことが不可欠だといえます。国語の世界でも経験がものをいうのです。

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