第11回 説明文/段落分けについて
山本講師(中学受験鉄人会スーパープロ家庭教師)
今回は説明文の段落分け問題について学習します。段落分け問題自体は、入試で頻出というわけではありませんが、文章全体を趣旨に沿って読み解く力がないと対応が難しいといえます。したがって、段落分け問題をたくさん練習することが文章の要旨や流れをつかむ力を磨くための近道だともいえるのです。
では、早速次の文章を読んでみましょう。出典は『日本語を反省してみませんか』(金田一春彦)からです。おもに方言のことが書かれていますので、ご自身の出身地の言葉のことや郷里での会話をリアルに思い浮かべながら読んでみて下さい。制限時間は3分とします。
A 明治以降、日本が政府によって統一されて以来、共通語というものがどうしても必要になった。どこの地方へ行っても通じる言葉を普及(ふきゅう)させようということで、文部省やNHKなどで非常に力をそそいだのである。そしてそれがあっという間に全国に普及したということは、世界でも非常に注目すべきことである。
B 方言の違(ちが)いが非常に激しいにもかかわらず、日本はどこへ行っても共通語が通じる。私は方言を研究してはいるが、実際農村や漁村で使われている言葉は、聞いてもわからないものが多い。ところがその土地の人はよその地方から来た人だと思えば、共通語で話してくださる。しかし東京の人間にはこういう真似(まね)はできない。東京の言葉が共通語だと思っているから、ほかの地方の言葉を使おうとはしない。ちょうどアメリカ人が英語がどこに行っても通じるので、ほかの国の言葉を覚えようとしないのと似ている。しかし東京以外の地方はすべて自分の方言と共通語と、両方使い分けている。これは実に大したものである。
C 日本では、共通語と方言の違いが相当激しい。これがヨーロッパあたりへ行くと、スペイン語とポルトガル語の違いは、青森県の言葉と福島県の言葉ぐらいの違いしかない。それでもれっきとした二つの国語である。ちょっと聞くとスペイン語とポルトガル語が話せるなんていうのは、何か非常に偉(えら)いような気がする。しかし本当は、青森県の言葉と共通語が話せるということは、もっと違った言葉を使い分けることができることなのである。よく日本人は語学が下手だと言われるが、これは大間違いで、日本人の方が語学の天才かもしれない。
D さて日本語の未来ということを考えると、共通語がどんどん普及していくのはけっこうなことかもしれないが、困ったこともある。今後は方言がどんどん衰退(すいたい)していってしまいそうだからだ。共通語というものが方言を(注)放逐(ほうちく)してしまって、我々の話す言葉が共通だけになってしまうことが、果たしていいことなのだろうか。これは大いに考えなければいけない。というのは、共通語にはいろいろな問題があるからだ。共通語というものは、大体東京の言葉が基本になっている。東京の言葉が万(ばん)能ならば文句はないのだが、そうとも言えない。東京の言葉というのは、東京という都会に住んでいる人間の間に生まれた言葉であるために、どうしてもきめ細かい表現が足りないのである。
E 日本中で雪が最も降ると言われる新潟(にいがた)県へ行くと、雪に関する語彙(ごい)が非常に発達している。まず、秋、高い山の上に雪が降る。これをダケマワリと言う。次に、平地にも、だんだんいろいろな種類の雪が降ってくる。その中で灰のようなのはコナヨキ、それから水分をよけいに帯びたのはミズヨキ、大きなのがジャリヨキ、綿のようなのがワタヨキ、ねばっこいかどうかは知らないがモチヨキと言われるものもある。いろいろな種類の雪が降るが、それにみんな名前がついているところが見事だ。新潟県下の人は、冬になると毎日降り方の違った雪を見て、この雪は当分降り続くであろうとか、すぐにとけるであろうとか、経験で推量する。だからそういったものの一つ一つに名前が必要になる。
F これが、もっと寒くなると、なかなか降りやまない、とけにくい雪が降ってくる。なかには「棚木(たなぎ)ハズシ」というのがある。棚木というのはものを載(の)せるための棚に使われている木のことだそうだ。とけにくい雪が降り出すと当分外へ出られないので、燃料がなくなってしまう。そこで、棚木をはずして燃やしてしまうところからこの名前がつけられたのだそうだ。
G 雪の生活が非常に長い地方では、雪の降り方を見て、一つ一ついろいろな名前をつけている。こういった言葉はその地方になくてはならないものであり、いくら共通語が盛(さか)んになったからといって、これをなくしてしまうことはできない。またなくしてはいけない貴重な言葉である。
H 共通語というものは、まず東京に育った言葉だということ。このためにいろいろ欠陥(けっかん)があるということを、覚えておいていただきたい。
I 東京という町はその成立のしかたが独特である。東京は京都の町と違い、昔から人が住んで、だんだんに発達してきた町ではない。江戸時代の初めに、全国各地の人が移り住んで、急にできた町である。明治維新(いしん)以後にもたくさん地方から人が流入してきた。いわば人工都市である。
J そういうところに発達した言葉というものは、おたがいにほかの地方から来た相手に通じない言葉はやめようという気持ちが働く。地方の色合いのついていない言葉が、自然にできてしまうわけだ。各地にある、生き生きした豊かな色合いを持った言葉が、どうしても東京の言葉には少なくなってしまう。
いかがでしょうか。説明文でありながらも「方言」という身近なテーマをとりあげた内容ですので、リアルなイメージは浮かべやすかったのではないでしょうか。
では、早速設問に取りかかりましょう。
【問題】
上記文章は内容により、3つの段落に分けることができます。第2段落、第3段落が始まる文をA〜Jで答えなさい。
【解説】
問題を解く前に「段落問題」の一般的な解法を説明します。
1、形式段落と意味段落の違いを確認しておきましょう。
(1)形式段落
一字分下げて書いてあるところから、次に改行するところまでのひとまとまり。本文はA〜Jの9つの形式段落から構成されます。
(2) 意味段落
いくつかの形式段落を意味内容からひとまとめにしたもの。問題で問われているのはこの意味段落です。
2、段落問題の解き方を整理しておきます。
(1) 形式段落ごとに要点を読み取る。
●「中心文」や「キーワード」をもとにまとめてみる。
(2) 文章全体を意味段落に分ける。
●形式段落どうしがどういう関係でつながっているかを考えながら、分けてみる。
(3) 文章全体における意味段落の役割を考える。
1. 話題が提示されている段落はどれか?
2. 理由や具体例などが示されている段落はどれか?
3. 結論が述べられている段落はどれか?
さて、上記解法を踏まえて、問題を解いてみます。
まず、第一段落ですが、上記2(3)1.の「話題」にあたります。日本において共通語が果たす役割について書かれている部分つまりA〜Cが該当します。ちなみに、Dは「さて」という転換のつなぎ言葉で始まっており、ここから話題が変わっていることが分かります。したがって、第2段落はDからになります。
次に、第2段落では共通語に欠けている「きめ細かい表現」が方言では生かされていることを新潟県での雪を表現する言葉などを具体例として説明されており、D〜Gが該当します。Hの文頭は「共通語というものは...」という結論を説明する際の言い回しで始まっており、第3段落はHからになります。
なお、第3段落は上記2(3)3.の「結論」にあたる部分です。共通語が東京に育った言葉であり、真の意味で「共通した言葉」ではないことを結論としています。
飛躍アドバイス
最後に意味段落の分け方のコツをまとめておきましたので、良く復習しておいて下さい。
1、形式段落ごとに「話題」や「要点」を読み取る。
(1) 文章途中の問いかけの文、段落はじめの話題転換の接続語(「さて」「ところで」「では」など)に注目する。
(2) となり合う形式段落の話題や内容が共通しているのかどうか、連続しているのかどうかを考え、意味段落に分けてみる。
2、 文章構成の三つの基本型を考えて「筆者の言いたいこと」を読み取る
(1) 頭括型・・・・・・文章の最初でまとめるパターン。
結論(話題+まとめ) ⇒ 本論
(2) 尾括型・・・・・・文章の最後でまとめるパターン。
序論 ・・・・・・文章全体の「話題」を提示する段落。
↓
本論 ・・・・・・「説明」する段落
●具体例
●理由・原因
●くわしい説明
↓
結論 ・・・・・・文章全体の「まとめ」を示す段落
(3) 双括型・・・・・・文章の最初と最後でまとめるパターン。
結論(話題+まとめ) ⇒ 本論 ⇒ 結論