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イメージ力を鍛えると国語の偏差値は飛躍的に上がる!

第15回 随筆/指示語・選択式問題

山本講師(鉄人会専任スーパープロ家庭教師)

 

 今回は、随筆の指示語・選択式問題について学習します。 では、まず次の文章を目の前にありありと鮮明なイメージが浮かぶように留意しつつ、スピードも意識して2分以内くらいで読んでみてください。なお、出典は『日本語 表と裏』(森本哲郎)です。

 日本人はいたるところで「よろしく」を連発する。年賀状にはきまって、「本年もどうぞよろしく」と書き、知人に何か依頼する時にも、「よろしく」といって頼む。慣用語、あるいは挨拶語だといって聞き流せばそれまでだが、そういわれて誠実に相手の依頼にこたえようとすると、「よろしく」の意味がわからなくなる。「よろしく」というのは、「よろしく心を配って欲しい」ということであろう。頼みごとをするほうは、具体的な要求を明示して頼むと相手が迷惑するだろうから、迷惑がかからないように、相手のでき得る範囲内で力を貸して欲しいと、その範囲を相手に任せているわけである。したがって、「よろしく」という言葉の意味は、「お志だけで結構です」ということにちがいない。しかし、そういわれると、頼まれた相手は具体的な要求を出されるよりも、もっと迷惑するのである。たとえば、寄付を乞われた場合、一口いくらとあれば、一口なり二口なり、あるいはその金額によっては断るなりできるが、「お志」といわれると、どのていど協力すべきか思い悩まねばならない。相手に判断を強い、思い悩ませるのは、考えてみれば、ずいぶん失礼な話ではないか。

 サハラ砂漠のジャネットというオアシスで何日か過ごしたときのことだ。そこに住むトゥアレグ人からトゥアレグ語(タマシェクという)の単語をいくつか教えてもらった。といっても、それは私たちが連れて行くロバの名前だったのであるが。

 一頭のロバの名は「コーエル」といった。どういう意味なのかね、と聞くと、「黒いが本当の黒でない」という意味だということだった。もう一頭のロバは「アディグナス」という名だったが、それは「口まわりが黒い」という意味であり、さらにもう一頭の「ワンティグアト」というのは、「いつも跳びはねている」という意味だというのである。それを聞いてわたしはトゥアレグ語を習うのをあきらめた。こんなかんたんな単語でこんな複雑な意味をあらわす言葉というのは、そのコミュニティーにとけこまないかぎり、外部の者にはとうてい理解できない独特の取りきめ、すなわち言語外のルールを持っているにちがいないからである。

 このことは逆にいうと、その社会が同質であればあるほど、表現は簡単ですむということである。家庭内の会話ではくどくどいう必要はない。言語の大半が省略されても意志はちゃんと通じる。なぜなら、判断や意志や感情を相手につたえる場合、伝達者と受け手とが同質の情報環境に置かれているなら、言葉を厳密に使用する必要はなく、きわめて簡単な表現でも同質の価値観や等質の感情が言葉を補足してくれるからである。「よろしく」というのはそうした同質環境における言葉のいい例であろう。

 「よろしく」とは、前記のように、いっさいの判断を相手にゆだねた依頼の言葉である。だが、もしもその相手が自分とまったく異なる情報環境の住人――習慣や、ものの考え方を異にする世界の人間であったならば、こんなふうに相手の判断に任せるわけにゆくまい。どのような処置をされるか見当がつかないからである。だから「よろしく」は外国人に対しては使えない。いや、おなじ日本人同士であっても、相手が異国にいるような場合には、“神通力”を失ってしまうのだ。げんに私は「よろしく」と頼まれて大いにとまどい、思い悩んだ経験がある。

 パリに半年ほど滞在していた時のことだ。「ぼくの知人の某氏がパリへ行く。よろしく」という手紙を友人から受けとったのである。私の友人は気軽にそう書いてよこしたのだが、いったい「よろしく」とは何を要求しているのか、こちらにはさっぱり見当がつかない。空港まで出迎えて欲しい、というのか、ホテルをとっておいてもらいたい、というのか、パリを案内してやってくれ、というのか、一度ぐらい食事を共にしてもらえまいか、というのか。私はさんざん思い悩んだすえ、具体的な依頼がないかぎり、何もしないことにした。そのような判断までこちらにさせるというのは――冗談ではない、あまりにも甘えすぎであり、虫がよすぎると思ったからだ。

 「よろしく」という言葉は一見、相手の意志や判断を尊重する言い方のように思える。しかし、よく考えてみると、それは責任を相手に転嫁させることによって、自分の責任をのがれようとする呪文ではないか。どのようなことであれ、判断をくだすということは、それなりに努力を必要とする。あれこれ考えることは、たいへん面倒なことなのである。その面倒な思案を放棄して相手に押しつけることは、時には無礼にもなりかねない。日本の敬語法においては明確な言い方を避け、間接的で断定しない表現がとられるというが、それは往々にして相手を尊敬するというより、相手におんぶする慇懃無礼、すなわち、表向きは丁寧で、じつはこの上ない厚かましさに通じているのだ。「よろしく」とは、別言すれば、「よきにはからえ」ということである。「よきにはからえ」などというのは殿様が家来に対して命じる言葉であり、横柄な要求以外の何者でもないのである。

【問1】

この文章の筆者の考え方に合っているものを次から一つ選び記号で答えなさい。

  • A.「よろしく」ということばは具体的要求を明示せずに相手の意志を尊重するていねいなことばである。
  •  
  • B.日本人は「よろしく」を連発するが、このような言葉は、相手に判断を強いるので、多用すべきではない。
  •  
  • C.明確な言い方を避ける日本の敬語法は、日本人のつつしみ深い精神の表れとして好ましい。
  •  
  • D.同質の情報環境内での会話でも、相手に正確に意志を伝えるためには、言葉を厳密に使用すべきである。

[問1について]

 「筆者の考え方」=本文の主旨をまず整理しておく必要があります。キーワード(何度も出てくる重要なことば)は「よろしく」ということばであり、このキーワードに対する筆者の評価は明らかにマイナスです。選択問題では、まず、各選択肢が、プラスに属するか、それともマイナスに属するのかを明確にする必要があります。AとCはプラスに属し、本文全体の主旨からも明らかにはずれています。そうすると、BとDの2つが残ります。(選択式問題ではたいてい、最終的に2つの選択肢が残るようになっています。)次に、BとDをよく見比べて、本文中に同一内容あるいは根拠となる部分があるかどうか確認しましょう。すると、Dについては本文中の記述にはないことがわかります。Bの内容は最終段落で、筆者の体験をふまえて強調されており、正解はBとなります。

選択式の問題では、たいていの場合、4〜5個の選択肢の中から1〜2個の正解を選択する問題が主流を占めます。では、少し見方を変えて出題者の立場からですと、一見正解に映る解答者がひっかかりそうな選択肢をうまくいれておくことがポイントとなります。つまり、解答する側からすれば、いかにひっかからないように正解を見抜けるかということが重要だということです。したがって、いきなり正解を求めるのではなく、堅実に「正解ではない」選択肢を消去してゆく作業が必要となります。この際に役立つのが、プラス・マイナスイメージの区分、本文との整合性、オーバー表現の有無(オーバー表現「絶対に、必ず、全くなど」は誤選択肢の特徴)の見極めなどです。また、練習を重ねるうちに独特の臭覚とでもいいましょうか“カン”が身についてきます。こうなればかなりの難問でも対応できるようになります。

【問2】

下線部「このこと」が指し示している内容に当たる部分を本文中から「〜こと」につながるようにぬき出しなさい。

[問2について]

「このこと」に当てはまることばをS(主語)としますと、「Sは逆にいうとその社会が同質であればあるほど表現は簡単ですむということである。」となり、「Sは逆にいうと・・・」ですから、「社会が同質」及び「表現が簡単」と逆の内容をリサーチすればよいことになります。すると、傍線部の3行前から「複雑な意味をあらわす・・・・コミュニティにとけこまない・・・・」とあり、「〜こと」につながるようにぬき出すと正解は次のようになります。

 正解:「こんな簡単な単語でこんな複雑な意味をあらわす言葉というのは、そのコミュニティにとけこまないかぎり、外部の者にはとうてい理解できない独特の取りきめ、すなわち言語外のルールをもっているにちがいない」(こと)

指示語の問題を解く場合に大切なことは、(1)リサーチ(直前部分から)と(2)当てはめです。

(1)リサーチは直前部分が原則ですが、少しさかのぼらないと見つからない場合や、「それは私の生きがいでした。・・・・絵を描くこと以外には・・・・」などのように指示された内容が、後ろの方で出てくることもありますので注意しましょう。

(2)当てはめは指示語の代わりに指示内容を当てはめてみて、自然な文となるかどうかがひとつの基準となります。たとえば、「私は幼少のころから、読書が好きで、ジャンルを問わず、たくさんの本に親しんできました。それが、私の人生に影響を及ぼしていることは疑う余地のないことです。」という文では、それに「幼少のころから読書が好きで、ジャンルを問わず、たくさんの本に親しんできた(こと)」というように最後に(こと)を付加することで、当てはめやすい形に調整します。

《飛躍アドバイス》

1. 選択式の解法の基本は消去法です。誤っている選択肢をいかに早く見つけられるかです。誤った選択肢の特徴は、@オーバーな表現であることA文中の記述にないか矛盾するものだということです。消去されたあと、選択肢が二つ残ることが多いといえます。さらに、選択肢の文自体が長いときは、各選択肢の末尾表現のみで比較した方が、違いが明確になり、判断のスピードもアップします。初めから各選択肢全文を読んでいると、時間もかかり、色んな情報が目に入ってしまい、逆に判断を迷わせる結果となってしまうことが多いので注意しましょう。

2. 指示語については指示内容が何なのか(時間、場所、会話、人物など)把握した上で、直前部分を探せば、答えが見つかることが多いといえます。「一文を抜き出しなさい。」でなく、「表わしている部分を抜き出しなさい。」という場合は特に余計な部分は排除して指示部分のみを答えることが重要です。抜き出した部分を実際の指示語の部分に当てはめてみて、自然な文章になっているかどうかも確かめてみましょう。

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