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イメージ力を鍛えると国語の偏差値は飛躍的に上がる!

第16回 随筆/記述式1

山本講師(鉄人会専任スーパープロ家庭教師)

 

 今回は、随筆の記述式問題、特に要旨をまとめる問題について学習します。実際の中学入試問題で「要旨」の問題が出題されるケースはあまり多くはありませんが、文章全体を完全に理解できているかどうかの一つの目安となり、通常の記述問題よりも整理力や記述力が要求されますので「要旨」の問題をマスターすることは非常に有益だといえます。

 では、まず次の文章を目の前にありありと鮮明なイメージが浮かぶように留意しつつ、スピードも意識して3分以内くらいで読んでみてください。なお、出典は『旅をする木』(星野道夫)です。

 ある夜、友人とこんな話をしたことがある。私たちはアラスカの氷河の上で野営をしていて、空は降るような星空だった。オーロラを待っていたのだが、その気配はなく、雪の上に座って満点の星を眺めていた。月も消え、暗黒の世界に信じられぬ数の星がきらめいていた。時おり、その中を流れ星が長い線を引きながら落ちていった。

「これだけの星が毎晩東京で見られたらすごいだろうなあ・・・・・・夜遅く、仕事に疲れた会社帰り、ふと見上げると、手が届きそうなところに宇宙がある。一日の終わりに、どんな奴だって、何かを考えるだろうな」

「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえば、こんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろ。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?」

「写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンバスに描いて見せるか、いややっぱり言葉で伝えたらいいのかな」

「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって・・・・・・その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」

 人の一生の中で、それぞれの時代に、自然はさまざまなメッセージを送っている。この世へやって来たばかりの子どもへも、去ってゆこうとする老人にも、同じ自然がそれぞれの物語を語りかけてくる。

 まだ幼かった頃、近所の原っぱで紙しばいを見終えた後、夕ごはんに間に合うように走って帰った夕暮れの美しさは今も忘れない。あの頃、時間とか、自分をとりまく世界を、一体どんなふうに感じていたのだろう。一日が終わってゆく悲しみの中で、子どもながらに、自分も永遠には生きられないことを漠然と知ったのかもしれない。それは子どもがもつ、本能的な、世界との最初の関わり方なのだろうか。今思い返せば、自然を違った見方で意識する出来事がいくつか自分にもあった。そのひとつひとつが、アラスカに来るまでの小さな分岐点になっていたような気がする。

 最初の体験は、小学校の頃、近所の映画館で偶然観たひとつの映画だった。題名は「チコと鮫」。ストーリーは、観光開発で変わり始めようとする南海のタヒチ島を舞台に、サメと友だちになった原住民の少年チコと、ヨーロッパから観光で訪れた少女との淡い恋物語である。まだ子どもだったぼくが魅きつけられたのは、その背景に映しだされたどこまでも続く南太平洋の青い広がりだった。入口で買ったパンフレットには、ハリウッドのセットを使わず、現地で撮られた最初の自然ものの映画と書かれていたのを覚えている。当時チャンバラ映画ばかり見ていたぼくは、突然、世界の広がりを見せられたのだ。本当に衝撃的だったのだろう、ぼくはディアンナという少女の名前を今でも覚えている。

 やがてぼくは北海道の自然に強く魅かれていった。その当時、北海道は自分にとって遠い土地だった。多くの本を読みながら、いつしかひとつのことがどうしようもなく気にかかり始めていた。それはヒグマのことだった。大都会の東京で電車に揺られている時、雑踏の中で人込みもまれている時、ふっと北海道のヒグマが頭をかすめるのである。ぼくが東京で暮らしている同じ瞬間に、同じ日本でヒグマが日々を生き、呼吸をしている・・・・・・確実にこの今、どこかの山で、一頭のヒグマが倒木を乗り越えながら力強く進んでいる・・・・・・そのことがどうにも不思議でならなかった。考えてみればあたりまえのことなのだが、十代の少年には、そんなことがひっかかってくるのである。自然とは、世界とは、面白いものだなと思った。

あの頃はその思いを言葉に変えることは出来なかったが、それはおそらく、すべてのものに平等に同じ時間が流れている不思議さだったのだろう。子どもながらに、知識としてではなく、感覚として世界を初めて意識したような気がする。

 数年前、同じようなことを言った友人がいた。東京で忙しい日々を過ごす編集者だった彼女は、何とか仕事のやりくりをつけて、クジラを撮影するぼくの旅に一週間だけ参加した。前日の夜遅くまで東京で仕事をしていた彼女にとって、南東アラスカの夏の海は、ページをめくるように現れた別世界だった。

 ある日の夕暮れ、ザトウクジラの群れに出合った。ぼくたちは、小さな船で、潮を吹き上げながら進むクジラのあとをゆっくりと追っていた。クジラの息が顔にかかってくるような近さで、それは圧倒的な風景だった。あたりは氷河と原生林に覆われ、悠久なる時の流れの中で、すべての自然が調和し、息づいていた。彼女は船べりにもたれ、心地良い風に吹かれながら、力強く進むクジラの群れをじっと見つめていた。

 その時である。突然、一頭のクジラが目の前の海面から飛び上がったのだ。巨体は空へ飛び立つように宙へ舞い上がり、一瞬止まったかと思うと、そのままゆっくりと落下しながら海を爆発させていった。それは映画のスローモーションを見ているような壮大なシーンだった。

 やがて海に静けさが戻り、クジラはまるで何もなかったように力強く進んでいる。ブリーチングと呼ばれるその行動を、今まで何度か見てはいるが、これほど近くで眺めたことはない。人間は動物のすべての行動に解釈を試みようとするが、クジラが何を伝えようとしているのか、結局ぼくたちがわかることはないだろう。クジラはただ風を感じたかったのかもしれない、ただ何となく飛び上がってみたかったのかもしれない。

 が、目の前で起きた光景に、友人は言葉を失っていた。彼女が打たれたものは、フレームの中の巨大なクジラではなく、それをとりまく自然の広がりだったのだろう。その中で生きるクジラの小ささだったのだろう。そして一瞬ではあったが、彼女がクジラと共有した時間だった。ずっと後になってから、彼女はこんなふうに語っていた。

「東京での仕事は忙しかったけれど、本当に行って良かった。何が良かったかって?それはね、私が東京であわただしく働いている時、その同じ瞬間、もしかするとアラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない、それを知ったこと・・・・・・東京に帰って、あの旅のことをどんなふうに伝えようかと考えたのだけれど、やっぱり無理だった。結局何も話すことができなかった・・・・・・」

 ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほど大きい。

【問い】

この文章の要旨を180字以内でまとめなさい。(なお、句読点を含みます。)

[解説]

「要旨」とは「筆者の主張、言いたいこと」ですので、まずは本文中から該当する部分を見つけ出す必要があります。文章に限らず、会話でも同じことが言えるかと思いますが、「言いたいこと」は繰り返し、強調されることになりますので、同一あるいは類似した言葉をチェックしていくことにより、「キーワード」を探し当てることができます。

 本文で繰り返し出て来る言葉をチェックしていくと次のことがわかります。

  1. おおざっぱに言えば、「自然」について考察された文章である。
  2. 「自然」に対する見方について、プラス(筆者が賛同する考え方)とマイナス(筆者が賛同しない考え方)の相対立する考え方を示している。
  3. プラスのキーワード  「感動」、「感覚」、「平等に同じ時間」
  4. マイナスのキーワード  「言葉」、「知識」、「解釈」

上記のように(1)から(4)まで焦点を絞り込んでいくと、贅肉を殺ぎ落とした骨格が現れてます。

(3)、(4)のキーワードを組み合わせると以下のようになります。
『自然に対して人間の知識によって、言葉で解釈することよりも、日常生活と平等に同じ時間の中で自然が存在しているという感動を覚え、感覚的にとらえることの方が重要である。』

しかし、まだ解答としては不完全ですね。骨格だけではなく、少し詳しい表現(=「肉」に該当します) も付け足しましょう。正解(例)は下記のとおりとなります。

『大都会の東京で暮らしている同じ瞬間に、北海道の大自然のヒグマが力強く進んでいることは、すべてのものに平等に同じ時間が流れていることであり、感動的である。人間の知識や常識で自然をとらえ、言葉を用いて何らかの解釈を与える考え方ではこのような感動は得られない。、自然を、そして世界を感覚的に意識する生き方が重要である。』(156字)

《飛躍アドバイス》

では、以上のことをふまえて「要旨をまとめる」にはどうすればよいでしょうか。下記のとおりに整理しました。

  1. 的確な読み取りが基本(原文と問いの中に答えはある)
    先入観をもたずに、筆者の文章を出題者の道案内で素直に読むことが大切です。 記述問題の条件は、文章と問題文に書かれています。その条件を守ることが、解答者の心情によっておろそかにされがちですので、十分注意しましょう。出題者はその文章の内容を読み手に理解してもらいたいのですから、問い全体で文章の読み取り方を説明しています。“解き方は問いの中”にということばを心に刻みましょう。
  2. 問題文を先に読もう
    ふだん読む文章は自分自身の好みによって選び、好きな読み方をすればよいのです。しかし国語の試験で出題された文章は、出題者の好みによって選択された文章を、出題者の意図に沿って読んでいくしかありません。それならば先に読んでいた方が無駄が省けます。
    1. 問題文を読む→問いを頭に入れる
    2. 文章を読む→接続詞を書き込んだり、何度も出てくる言葉や、抜き出しの部分に印をつけたりしながら
    3. 一問ずつ解いていく、文章の問われている部分を読み返しながら
    4. よくわからない問いはとばす(次の問がヒントになっていることもあるから)
    5. 最後に解答用紙に書く、ぬき書きは正確に
  3. 文末に注意して筆者の考え方を読み取る
    (「と思う」「べきだろう」「ではないか」など)
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