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イメージ力を鍛えると国語の偏差値は飛躍的に上がる!

第17回 随筆文/記述式問題2

山本講師(鉄人会専任スーパープロ家庭教師)

 

 今回は、前回に引き続き随筆文の記述式問題について学習します。今回は記述式問題の中でも特に理由をまとめる記述式問題について解説してゆきます。 では、まず次の文章を目の前にありありと鮮明なイメージが浮かぶように留意しつつ、スピードも意識して3分以内くらいで読んでみてください。なお、出典は『生きて愛する為に』(辻邦生)です。

 子供の時から地図を見るのが無性に好きだった。中学に入って、地理の時間になると、自然の地形から鉱工業、農産物の集散まで、一枚の地図からいろいろのことを読んでいく。それが何とも楽しかった。一時、地質学に興味をもち、化石採集などの小旅行に出かけたのも地図好きの産物だった。

 ほかの教科書はすべて戦中戦後の騒ぎで、きれいさっぱりなくなっているのに、『日本地図』と『世界地図』の二冊の本だけは、今も手元にある。下手な墨の字で書いたクラス名と自分の名前が残っているのも、ある種の感慨をさそう。考えてみればこの上を確実に半世紀が経過しているのである。

 当然、地図の内容も変わっている。とくに世界地図のほうは、イギリスが七つの海を支配していた時代だから、ピンクのイギリス領はインドからアフリカに広がっている。

 この時代離れした地図のフランス、ドイツ、スイスあたりい、赤鉛筆でしるしがついている。それは学校時代につけたのではなく、最初の留学のとき、これを持ち歩いていたからである。それは別になつかしくて手放せなかったというのではなく、かつて地図を見て夢見た場所と現実の場所とを並べてみたいと思ったからだ。中学時代にはパリでもロンドンでも、容易に行ける都市だとは思えなかった。地図にはそうしたあこがれのしるしが残っている。それが満たされたことを、古いこの地図にも、いっしょに喜んでもらいたかったのである。

 今でも地図を眺め、まだ見ない都会や自然の景色をあれこれ心に描いてみるのは、旅に出るのと同じように楽しい。最近はテレビでアフリカや南米の秘境を映し出してくれるので、いながらにして、冒険旅行をすることが出来るが、そうした未知の場所についての知識がふえると、それだけ空想旅行の楽しさも深まっていく。

 地図とは、こちらの関心のありようによっていくらでも興味深い事実を打ち明けてくれる物語の宝庫のような存在なのだ。休みの日の静かな雨の夜などに、古いクックの時刻表を取り出し、列車の発車や到着時刻を調べてみる。それは宇宙空間のSF的旅行と同じことだから、決して現実のままである必要はない。もう廃止された時刻の列車でも、それに乗る権利はあるわけで、こんな空想旅行で、太陽の輝く北アフリカや、雪の降りしきるデンマークを放浪するのは、現実の旅以上にわくわくする。日本国内の知らない土地にもどしどし気ままな旅をする。かつて稚内から冬のオホーツク沿岸をサロマ湖まで旅をしたことがあるが、今になってみると、それが本当の旅だったか、地図の上の空想旅行だったのか、全く区別がつかない。

 地図を見ながら、地形を想像するのも、最高の楽しみのひとつだ。だから、地図は詳細な道路地図より、国土地理院の等高線の入ったもののほうがいい。道路のほか、市街地、鉄道、河川、湖沼などが空中写真さながらに正確に表記され、等高線があるから、谷の形もそこに読み出すことができる。むかし小学校の地理の時間に紙粘土を平らに延ばし、等高線の形に切りぬき、それを積んで立体的な地形を作ったことなどが思い出される。受験のため大半の人は忘れてしまったが、学問とはもともと生きる楽しさだったのである。

では、早速設問に入りましょう。

【設問】

傍線部「赤鉛筆のしるし」はなぜつけられたのですか。理由を二つ挙げ、それぞれ50字以内で答えなさい。(句読点含む。)

[解説]

まず、傍線部の直後に「それは学校時代につけたのではなく・・・」とありますが、指示語「それ」が示しているのは明らかに「赤鉛筆のしるし」であり、ここから「赤鉛筆のしるし」についての説明がスタートすることがわかります。さらに、読み進めていくと、理由を述べるときに用いる言い回しである「〜から」という表現が出てきます。傍線部の次の行から3行に渡って「それは別になつかしくて・・・・・並べてみたいと思ったからだ」とあり、ここが解答の一つ目の材料となります。次に引き続いて、「中学時代・・・・・あこがれのしるしが残っている。」と、「しるし」を「あこがれの」という感情語で修飾しており、さらに「それが満たされ・・・」という表現が続きます。指示語「それ」が示しているのは言うまでもなく「あこがれ」であり、つまり、ここが解答の二つ目の材料ということになります。

では、二つの材料のそれぞれからエキスを抽出し、さらに解答としてふさわしい形になるように加工してみましょう。

まず、一つ目ですが、エキスつまり、なくてはならない重要語(=キーワード)は『中学時代に夢見た場所』、『現実の場所』、『並べてみたい』の3個です。素材がそろったところで、組み合わせてみましょう。

→『中学時代に夢見た場所と現実の場所を並べてみたい』次に味付け、つまり加工してみましょう。「並べてみたい」という部分がわかりづらくなっていますので、ここに手を施す(=詳しくする)だけでOKです。

→ 一つ目の解答例;「中学時代に夢見た場所と現実の場所を並べることにより、夢が実現したことを確かめるため。」(42字)

 次に二つ目ですが、同じくエキスつまり重要語(=キーワード)を抽出しますと、「容易にいける都市でない」「あこがれ」「満たされ」の3個が出てきます。では、組み合わせてみましょう。

→「容易にいける都市ではないあこがれが満たさるたため」   これでは何のことやらわかりませんね。意味が通じるように文章を直しつつ加工してみましょう。

→ 二つ目の解答例「容易に行ける都市ではないと思っていたあこがれの地への旅行が実現した満足感を表したかったため。」(46字)

 記述を難しくしているのは「記述式はイチから自分で解答を考えて書く」という誤解です。百パーセント自分で考えて書くのは純粋な国語の読解の問題ではなく、もはや感想文だといえます。国語の記述問題は感想文とは似て非なるものであり、あくまで本文から材料をさがし、それを料理することが重要なのです。たとえていえば、オリジナルの作品を書くのではなく、編集する(順序を入れ替えたり、余計な部分を削ったり、言葉を補ったり、要約したりする)ことこそが記述問題に求められている能力だといえましょう。

《飛躍アドバイス》

  1. 記述が出たら問題の意図を冷静に確認。
  2. 解答を作る材料を文中から集める。
     (本文中の該当部分に印をつける)
  3. 材料のみを組み合わせてつなげ、文章化してみる。
  4. 3で作成した文章(素材)を加工し、場合によっては本文中にない語句を補足し、解答を作成する。
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