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目から鱗の社会科のツボ!
〜リアルタイム時事問題つき〜

第12回

藤木講師(中学受験鉄人会スーパープロ家庭教師)

 2007年3月16日、東京地方裁判所は、IT企業の元社長に証券取引法違反の罪により、懲役(ちょうえき)2年6ヶ月の実刑(つまり執行猶予(ゆうよ)なしの)判決を言い渡しました。理由は、会社の利益報告でウソをつき、株主や会社関連の多くの人に迷惑をかけ、経済界に対する信用を失わせたからというものでした。

 この判決には経済界のみならず様々な分野から大きな反響がありました。迷惑を受けた人達が「当然の判決」と受け止めたのに対し、「ウソの程度の割には刑が重すぎるのではないか。もっと巨額の不正行為も過去にあったが、それと比較すると公平さを欠くのではないか。」という有名弁護士のコメントや、「ひょっとすると生(なま)意気(いき)な奴は見せしめのために処罰するという一種の私刑(リンチ)なのではないか」と強く判決を批判する文化人もいました。

 ここで私が注目したのは裁判(司法)における公正さ、という点でした。裁判所には、一人の女神(めがみ)の像が置かれています。ところが不思議なことにこの女神は目隠(めかく)しをされ、手に天秤(てんびん)を持って顔の前に掲(かか)げているのです。これはどういうことでしょう。実はこの女神の姿こそ理想的な裁判のあり方を象徴するものなのです。

 つまり、目隠しは、世の中にある種々雑多の情報、偏見、利権(権利ではありません)、雰囲気などに目を奪われることなく、法と自己の良心のみを見つめよ、ということを示していて、天秤は、常にバランスを失わずに判断せよ、ということを言いたいのです。貧しさに耐えかねたジャン・バルジャンはたった一片のパンを盗んだだけで何年もの牢屋暮らしを言い渡されました。こんなことはあってはならないということです。(なお、女神の像はかつて鴎友学園で出題されました。)

 もう一つは、感情的な面についてです。裁判制度はこれを全く否定するものではありませんが、必要以上の感情移入は公正な裁判のあり方を曇らせてしまいます。「あいつはムカつくから刑を重くしろ」式の大衆リンチに発展しかねません。刑事裁判(犯罪を扱う裁判)で訴える側(原告)が被害者や被害者の遺族ではなく、検察官という行政機関の人であるのもこの点を考慮したのです。

 今後日本でも裁判員制度が始まり、私たち一般人が刑事裁判に参加していくことになります。考えてみて下さい。死刑制度のある日本では法律の力で人を殺すことだってできるのです。

 こう考えると、法律とは社会にとってなくてはならない「道具」であると同時に恐ろしい凶器にもなりうる、ナイフや包丁のような鋭さをもったものだということがわかると思います。(これは言葉というものが同じような性格を有する点にも似ています。)それだけに法を運用する人間には、通常以上の良識と判断力とそして何よりも公正さが要求されるのだと思います。

 ここで歴史上、裁判の公正さが問われた事がらを3件紹介したいと思います。

  1.  太平洋戦争前に日本にも裁判員制度のようなものがあり、一般の人が被告人の有罪・無罪の決定に参加することができました。しかし、裁判員の主観があまりにも入りすぎることへの批判が強まり、また戦争の混乱もあって、この制度は廃止されました。
  2.  明治時代の1891年、来日中のロシア皇太子をスパイと勘ちがいした警官が刀で(当時の警官はサーベルを帯刀していました。)切りつけ負傷させた大津事件が発生しました。時の日本政府は日露関係の悪化を恐れ、裁判所へその警官に死刑判決を出すよう圧力をかけました。行政権による司法権への干渉です。しかし、裁判官児島惟(い)謙(けん)は、傷害罪に死刑は適用できないとしてこの圧力をはねのけ、司法の独立(三権分立)を守ったのでした。
  3.  太平洋戦争に敗れた日本の責任者(政治家、軍人、外交官など)を裁く「東京裁判」が1946年からGHQ主導の下で行われました。この時、被告人には日本人弁護士のほか、アメリカ人弁護士も付けられましたが、関係者はこのアメリカ人弁護人にはあまり期待はしていませんでした。自分らと戦った「敵」を本気で弁護するはずがない、裁判の公正さを世にアピールするための演出でしかない、というのが大部分の見方だったのです。
     ところが、裁判が始まっているとこれらアメリカ人弁護人たちの「舌鋒(ぜっぽう)は火を噴(ふ)き」、全精力を傾けて、「敵」の弁護を始めたのです。ある弁護人はこうまで言いました。「もし、真珠湾攻撃が殺人行為であると言うのなら、連合国のある国がヒロシマやナガサキで行ったことも断罪されるべきである」と。当時の日本人はアメリカ人がアメリカ政府や大統領を弾劾(だんがい)する姿を見て驚きました。と同時に、法とそれを扱う者に課せられた厳しい責任を感じとりました。一度(ひとたび)被告人の弁護を任せられたなら、たとえそれがどんな人間であっても、その被告人の人権を守るのが弁護人としての使命である、ということです。

時事問題

 北陸地方の原子力発電所を運営している北陸電力は、1999年に( 1 )県の志賀原発(原子力発電所)で、核分裂を止めるために装備された( 2 )が脱落したため、分裂の連鎖反応を引きおこす「 3 」の状態になりそうになる事故が発生したにも関わらず、今までそれを発表していなかったことを明らかにしました。連鎖反応をとめることができなくなると、1986年にソ連の( 4 )で起きたような重大な事故につながるため、( 5 )省は電力会社に厳重な注意をしました。にも関わらず新潟県柏崎原発、静岡県浜岡原発でも同様な「隠し」があったことが次々と明るみに出て、古くは1978年福島第一原発でもあったことがわかりました。

 そして、今月(2007年3月)、志賀原発がある( 1 )県( 6 )半島で震度6強もの大きさの地震が発生しました。原子力設備は原子炉や( 2 )、あるいは冷却水用のパイプなどが複雑に組み合わされています。地震によって、どこかの部品がはずれたり、発電所が建っている敷地が沈下したりする危険な状態になってしまいます。

Q1. 文中(  )内にあてはまる語句を書きなさい。
Q2. 現在日本で運転中の原子力発電所は全部で何基ありますか。また、この数は世界第何位ですか。
Q3. そのうち最も多くの発電所がある都道府県はどこですか。
Q4. 現在国内でつくられる電力のうち、約何パーセントが原子力によるものですか。
Q5. 放射性廃棄物の処理場がある六ヶ所村はどこの都道府県にありますか。
Q6. 最近、放射性廃棄物の処理場建設をめぐって議論が起きている東洋町はどこの都道府県にありますか。

解答

Q1.  1. 石川  2. 制御(せいぎょ)棒(ぼう)  3. 臨海(りんかい)
    4. チェルノブイリ  5. 経済産業(省)  6. 能登(のと)
Q2.  54基 、 3位(1位アメリカ  2位フランス)
Q3.  福井県
Q4.  約21.9% (水力9.6% 火力68.5%)
Q5.  青森県
Q6.  高知県

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