第2回 言葉をたくさん覚えよう
彼の生家の文房具屋も同じ町内にあって、二人は幼い頃から顔見知りであり、町内の子ども会の会員同士にすぎなかったのだが、その年の晩秋のある日曜日の朝、子ども会の恒例で町内の小公園を清掃したのち、掃き集めた落ち葉でたきびをした際、彼が、いつもの銀杏の実の他に、ポケットにしのばせていたいくつぶかの生栗をそっと火の中に投げ入れたことが、二人を思わぬ仲に引きずりこむきっかけになったのであった。
あの朝に限って、どうしてそんなことをする気になったのか。全く[ ]としか思えないが、ただ年下の子らを驚かしてやろういういたずら心だけで、他に、たくらみなどあろうはずがなかった。ところが、銀杏の実が音を立ててはぜ始め、たきびを囲んでいる子らが笑いさざめいているうちに、ぽんと、ひときわ高い破裂(はれつ)音がして、それと同時に、彼のとなりにしゃがんでいた里子が、きゃっと悲鳴をあげてあおむけに倒れたのである。(つづく)
[問1]
「二人は幼いころから顔見知りであり」とありますが、これを短い言葉でふつうなんと呼んでいますか。ひらがな六文字で答えなさい。
[問2]
[ ]にあてはまる語句として最も適当なものを、次の中から選びなさい。
ア 魔がさした
イ 気に病んだ
ウ 夢を見ていた
エ どじを踏んだ
[解説]
国語の基礎力を養う3つの方法、それは「音読」「言葉の意味調べ」「読書」です。国語の勉強の仕方がわからないという人が多いのですが、この3つはやる気さえあればだれでもできます。
=音読=
スポーツでも音楽でも、練習をしなければ決して上達しません。これは国語でも同じです。国語の基礎力を養うのに最も役に立つのが「音読」です。
最近の中学入試国語では論述問題が増えています。では効果的な論述対策とはどんなものでしょうか。残念ながらテクニックだけでは十分な論述力はつきません。答えがぼんやりと頭の中で浮かんでも、それを言葉にしようとするとうまくいかない。こんな悩みを持つ受験生は大変多いのですが、答えを記そうとするときに、その内容が頭の中から聞こえてくるようでなければ、いくらあせってもなかなか文章の形になりません。
音読練習を積み重ねると、整った文章が頭の中にたくさん蓄積されます。この蓄積が多ければ多いほど、美しく正しい文章が書けるようになります。
=言葉の意味調べ=
みなさん国語辞典は持っていますね。しかし、その辞書が使い込んで真っ黒になっている人はあまりいないようです。以前は学校の授業で、“教科書に出てくるわからない言葉を辞書で調べ、その意味をノートに記す”ということがあたりまえのように実行されていました。今はどうでしょうか・・・?
国語の入試問題では、とくに「論説文」や「説明文」などにむずかしいものが多く、理解に苦しむ場合があります。その場合、「よくわからない」ですまさずに、理解できない言葉に出会ったら、必ず辞書で意味を確かめましょう。辞書の使い方などは、実際に使っているうちに自然に身についてきます。また、一度調べただけではよく理解できない場合もありますが、あまり気にする必要はありません。なんどか出会ううちに自然に納得できるようになります。最近は電子辞書が普及してきました。これは本の辞書より使いやすいので、店頭で実際に使ってみて、説明のわかりやすいものを選んで利用するのも良いでしょう。
=読書=
本をよく読んでいる人は国語に強い。これは当然ですね。本はよく読むのだが問題がうまく解けないという場合もありますが、問題の解き方を教わり、問題数をこなしていくと短期間に驚くほど上達します。
本を読んでいると、わからない言葉に出会います。これをいちいち辞書で調べていると、なかなか先に進めません。そのうちいやになって読むのをやめてしまう場合もあるかもしれません。わからない言葉に出会ってもあまり気にせずにどんどん読み進めましょう。たくさん読んでいるうちに、前後の内容から、はじめて出会う言葉の意味もなんとなくわかるようになります。すべてを完全に理解しようなどとは思わないことです。「だいたいのことがわかればよい」というような気楽な気持ちで読み進めばよいのです。
「入試のために」「知識を得るために」というように、まるでつらい仕事をするような読み方も感心できません。それでは本の世界にのめり込んでいくことができないからです。読書は楽しくなければ意味がありません。読みたい本、その中に自然に入っていけるような本を楽しんで読めばそれでよいのです。
たくさん本を読んでいると、国語の読解問題がよく解けます。また、読解問題で深い読み取り方をすると、読書でもいままで気づかなかったところに深い意味を感じ取ることができるようになります。このように、読書と読解練習とがお互いに助け合ってますます国語全般の力を高めて行きます。
問1
設問をよく読みましょう。「ひらがな六文字」とあります。このような場合、解答欄は、ほとんど例外なく6マスに区切ってありますから、字数を誤ることはないと思いますが、「おさな友だち」などと書いた場合は、当然誤りとなります。
問2
直前に「あの朝に限って、どうしてそんなことをする気になったのか。」とあります。その後に、「・・・自分でもよくわからない。」と補ってみるとよくわかります。“ふだんなら絶対に考えないようなことをしてしまい、しかも、なぜそのようなことをしたのか、自分でも理由がよくわからない”ということです。
[正解]
問1 おさななじみ
問2 ア(魔がさした)