秘伝!国語入試問題の解き方

第3回 選択問題の解き方(1)

 (…ただ年下の子らを驚かしてやろうといういたずら心だけで、他に、たくらみなどあろうはずがなかった。ところが、銀杏の実が音を立ててはぜ始め、たきびを囲んでいる子らが笑いさざめいているうちに、ぽんと、ひときわ高い破裂音がして、それと同時に、彼のとなりにしゃがんでいた里子が、きゃっと悲鳴をあげてあおむけに倒れたのである。)

 彼は、笑った。ぽんという破裂音は、生栗がはぜた音に違いなかったが、その程度で六年生の女の子が、まるで胸を強くつかれたようにひっくり返るはずがない。彼は、里子がみなを笑わせようとして派手に倒れて見せたのだと思ったのである。

 里子は、倒れたまま右目を手のひらでおおって、「痛いようー。痛いようー。」と泣き出した。彼は驚いてだき起こした。すると、右目をおおっている手のひらの、指のまたから、一筋の鮮血(せんけつ)が手の甲を走るように流れた。

 彼は、最初、里子に何が起こったのかわからなかったが、そばにいた男の子の一人が、「あ、栗だ!」と叫ぶのを聞いて、一瞬のうちにすべてを理解した。彼がそっとたきびへ投げ入れた生栗の一つがとうてい信じがたい勢いではぜ飛んで、しゃがんでいた里子の右目を激しく直撃したのである。まさかと思ったが、起こりえないことではなかった。出血しているから、ただ激しくあたっだでけではなくて、目のどこかを傷つけたのだ。(つづく)

[ 問 ]

 下線部「彼は、笑った。」とありますが、なぜ「笑った」のですか。最も適当なものを、次の中から選びなさい。

  • ア 里子が派手に倒れてみせたのが、あまりにこっけいだったから。
  • イ 生栗のぽんとはじける音がはじめて聞く音で、めずらしかったから。
  • ウ 自分がこっそりしかけた栗に、里子が予想通りにびっくりしたから。
  • エ 生栗がはじけた程度の音でおどろいた里子を、からかいたかったから。

[ 解説 ]

 いくつかの選択肢の中から正解を選ぶ問題は、「エンピツをころがして答を決める」などという笑い話もあるように、よく理解できない場合や自信がない場合でも、適当に選んで答(記号)を記すことができます。それでもまぐれ当たりで得点できる場合があるので、いつのまにかそのような解き方が習慣になってしまう場合があります。残念ながら、このような受験生は非常に多いのです。

 しかし、このような直感にたよった方法を用いていると、いつまでたってもあるレベルを超えることができません。

 試験時間はたいてい50分ですから、この短い時間の中で、長い問題文を的確に読みこなした上で、設問をひとつひとつ根拠を押さえながらていねいに解いて行くには熟練が必要です。熟練とは、一定の手順を、繰り返し繰り返し訓練して、体で覚えることです。

 入試国語の勉強方法がわからないというのは、解き方の手順がわからないということなのです。その手順を、これからいっしょに勉強して行きましょう。

 選択問題を解くときには、次のことに注意します。

 正解は一つです。そして、それ以外は誤りか、あるいは誤りとはいえないまでも、正解としては不十分です。(注意 設問によっては、正解をいくつか選び出すものもあります。)

 こんなことはあたりまえのことですが、選択問題の解き方の出発点はここにあります。

  • 1. 正解の選択肢には、正解である理由がある。
  • 2. 不正解の選択肢には、正解でない理由がある。
  • 3. 不正解ではないが、正解として不十分な選択肢には、不十分な理由がある。
     選択問題では、ひとつひとつの選択肢について、その正しい理由、正しくない理由をはっきり説明できなければなりません。これは実際にやってみると、たいへんわずらわしいのですが、だからこそ手順を踏むということが大切なのです。
     では、実際に問題を解いてみましょう。
     設問文には「なぜ『笑った』のですか。」とあります。つまり「理由」が問われています。
     まず、下線部の前後をよく検討し、理由が述べられている部分がないかどうかを調べます。
     順序としては、下線部(傍線部)の直前から探しはじめ、見つからない場合は少しずつ前の方へさかのぼって行きます。つまり、近いところから遠くへが鉄則です。
     前の部分に見つからなければ、やはり近いところから遠くへの鉄則どおり、直後から後の方へ下って行きます。
     本問の場合は、「彼は、里子がみなを笑わせようとして派手に倒れて見せたのだと思ったのである。」の部分に注目できます。
     この部分を理由の表現に言い換えて、「彼は、笑った。」(なぜなら)「彼は、里子がみなを笑わせようとして派手に倒れて見せたのだと思った(から)である。」としてみると、うまくつながります。
     要するに、「里子はほんとうに驚いたのではなく、『みなを笑わせようとして』驚いたふりをしたのだ。」と彼は考えたのです。

 以上をふまえて選択肢をひとつひとつ検討します。

ア「里子が派手に倒れてみせたのが、あまりにこっけいだったから。」

・「倒れてみせた」の部分が、上記の「驚いたふりをした」にあてはまります。

・正解の候補です。 イ「生栗のぽんとはじける音がはじめて聞く音で、めずらしかったから。」

・彼の笑った理由が、里子の驚いた様子ではなく、栗のはじけた音になってしまいます。

ウ「自分がこっそりしかけた栗に、里子が予想通りにびっくりしたから。」

・「予想通りにびっくりした」の部分が誤りです。これでは里子がほんとうに驚いたことになってしまいます。

・また、「予想通り」とありますが、問題文の中に里子がびっくりすることを彼が予想している部分はありません。

エ「生栗がはじけた程度の音でおどろいた里子を、からかいたかったから。」

ウと同様に、里子がほんとうに驚いたことになりますから誤りです。

 正解の候補はアだけです。

[ 正解 ]

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