第8回 復元問題の解き方
[ 問 ]
次の一文は、ある段落の最後にもともとあったものを抜き出したものです。どこから抜き出したものですか。この一文の直前の五文字で答えなさい。(句読点がある場合は、それをふくむ。)
けれども、彼の見当は外れていた。
[ 解説 ]
問題文から抜き出された文を、もとあったところへ戻す問題です。
抜き出された文を漠然と読んで、すぐに問題文のあちこちを探し回るやりかたではなかなかうまくいきません。
まず、抜き出された文の中から、決め手になる表現を選びます。
この場合は2点あります。
1. 「彼の見当」
2. 「はずれた」
1の「見当」とは、「おそらく…だろう」とものごとを推し量ることで、「予想」という言葉で置き換えることができます。
そこで、彼の「予想」が述べられているところを探します。その際、「…思った」「…考えた」などの「考え」を表す言葉が見つかれば、必ずチェックします。
2の「はずれた」から、1の「予想」が誤りであったことになります。
したがって、彼の「予想」と、それが誤りであった、という文脈を見つけ出し、抜き出された文を当てはめてみます。矛盾なく復元できれば正解です。
・「彼は、笑った。ぽんという破裂音は、生栗がはぜた音に違いなかったが、その程度で六年生の女の子が、まるで胸を強くつかれたようにひっくり返るはずがない。彼は、里子がみなを笑わせようとして派手に倒れて見せたのだと思った(予想した)のである。」
・けれども、彼の見当(予想)は外れていた。
・(なぜなら)「里子は、倒れたまま右目を手のひらでおおって、『痛いようー。痛いようー。』と泣き出した。彼は驚いてだき起こした。すると、右目をおおっている手のひらの、指のまたから、一筋の鮮血(せんけつ)が手の甲を走るように流れた。」(からである)
里子が倒れたのは芝居ではなく、本当のけがのためだったわけですから、明らかに彼の「予想」は誤りであったことになります。
もう一箇所検討してみます。
・「…出血しているから、ただ激しくあたっだでけではなくて、目のどこかを傷つけたのだ。目玉ではないように。とっさに彼は祈るように思った(予想した?)。」
・けれども、彼の見当(予想?)は外れていた。
・「『ど、どれ、見てあげる。手をどけて。』彼は、目をおおっている里子の手を引きはがそうとしたが、力が及ばなかった。里子は、痛みがますますひどくなるのか、泣きながらわなわなとふるえたり、身もだえする。仕方なく、彼は染直の店まで里子を両腕で横たえるようにだいていった。」
「目玉ではないように。とっさに彼は祈るように思った。」というのは、「祈り」や「願望」であって「予想」ではありません。したがって、この部分は正解としては不適当です。
[ 正解 ]
のである。