第10回 手がかりの見つけ方…「近く」に手がかりがある出題(2)
●第2段落
人間の骨の形は遺伝的に決まっており、混血とか種族の交代などがない限り変わらない、極めて安定したものだ、というのが長い間の定説であった。しかし、それが間違いであることがわかってきた。かつては骨も生活する人体の重要な構成部分だったのだから、何らかの形で日常生活の跡がそこに記録されているはずだという認識(=理解)が、ようやく支配的になってきた。
●第3段落
このような認識が生まれるきっかけとなったのが、「ウルフの法則」の再発見である。この法則の名前は、ドイツの解剖(かいぼう)学者ユリウス・ヴォルフにちなむ。彼は一九八二年に出した「骨の変形に関する法則」という研究書の中で、「動物の骨というものは、一生の間に、その構成部分に課せられた労働の方向に応じて形状を変え、労働の量を反映して厚みや大きさを増減するため、その時々の形状が変化して行く」と書いている。これが「ウルフの法則」である。
[問一]
第2段落の下線部「それ」「そこ」が指している内容を、文中の一語でそれぞれ書きなさい。
[解説]
指示内容は、直前に見つかる場合がほとんどです。無原則にあちこち探し回ってはいけません。必ず直前から、見つかるまで少しずつさかのぼっていきます。
指示語というのは、文章の流れの中で、いま話題になっている言葉や内容を繰り返し用いるのを避けるために用います。ですから、その指し示すものは、そこで話題となっている言葉や内容です。
・ぼくは本を読んでいます。本は「となりのトトロ」です。
この表現は正確なのですが、くどい感じがします。
・ぼくは本を読んでいます。それは「となりのトトロ」です。
これで十分意味が通じ、しかもすっきりとしています。
したがって、指示語の問題を解くときは、直前の話題になっている言葉や内容に注目します。
(注)設問の中には、指示語の前ではなく、後に指示内容が記されている場合がありますが、これは別の機会に説明いたします。
「それが間違いであることがわかってきた。」
・直前の文「人間の骨の形は遺伝的に決まっており、混血とか種族の交代などがない限り変わらない、極めて安定したものだ、というのが長い間の定説であった。」の中を探します。
・「『人間の骨の形は遺伝的に決まっており、混血とか種族の交代などがない限り変わらない、極めて安定したものだ、』というのが長い間の定説であった。」と、『 』をつけてみるとわかりやすくなります。
・「定説」が話題のようです。これを「それ」にあてはめてみます。
・「しかし、「(その)定説」が間違いであることがわかってきた。」
・「定説」とは「正しいと認められた考え方」の意味です。
まとめると、“いままで正しいと認められた考え方が間違いであることがわかってきた”という意味になり、矛盾なくつながります。
「そこに記録されているはずだ」
・直前の部分、「かつては骨も生活する人体の重要な構成部分だったのだから、何らかの形で日常生活の跡が…」の中を探します。
・「そこ」は場所を表します。
・「骨」が話題のようです。これを「そこ」にあてはめてみます。
・「かつては骨も生活する人体の重要な構成部分だったのだから、何らかの形で日常生活の跡が「骨」に記録されているはずだという認識が、…」
まとめると、“骨(という場所)に記録されている”という意味になり、矛盾なくつながります。
[正解] 「それ」 定説 「そこ」 骨
[問二]
第3段落の下線部の内容を、わかりやすく説明している一文の最初の五字を書きなさい。
[解説]
下線部は医学の研究書から引用した文ですから、むずかしい表現で書かれています。確かに小学校6年生にとっては理解しにくいかもしれませんが、落ち着いて探せばすぐに見つかります。
設問の「一文の最初の五字」に注意します。
・第4段落の終わりの部分、「『ウルフの法則』はまぎれもない事実として人や動物の生骨で一般的に見られるのである。」に注目します。
・第4段落も「ウルフの法則」が話題になっていますから、この段落に答えがあるかもしれません。
・下線部と第4段落を注意深く読み比べ、よく似た表現がないかどうか調べます。
・下線部「…労働の方向に応じて形状を変え」と、第4段落の最初の文「…習慣的な労働や体調に応じて、その姿形を少しずつ変えていく。」がよく似ています。
・第4段落では、この最初の文に続いて、「これは…。それは…。」とわかりやすい具体例をあげて説明を加え、最後に、「(このように)『ウルフの法則』はまぎれもない事実として人や動物の生骨で一般的に見られるのである。」とまとめています。
したがって、「下線部の内容をわかりやすく説明している一文?」としては、第4段落の最初の文「生きて行く限り、私たちの骨は習慣的な労働や体調に応じて、その姿形を少しずつ変えていく。」があてはまります。
[正解]
生きて行く