第11回 手がかりの見つけ方…「近く」に手がかりがある出題(3)
[テーマ2]
「物語・小説」では「人間関係、特に友情」
そもそも物語や小説では、古来人間関係が非常に大きなテーマになっているわけですが、少年少女向けの作品では、これが「友だち関係や友情」となって現れます。
ところで、物語や小説は、あくまで読者を意識し、読者の共感を得て広く読まれることを目的に書かれます。要するに一冊でも多く売れることを目的とした“商品”なのです。その意味でプライベートな日記や手紙とは根本的に異なります。それらにおいては出来事や感想、用件などが、原則としてありのままに記されます。しかし、物語や小説で、だれでも知っていたり、あるいは思いついたりする平凡なことを漫然と書き連ねたのでは、読者の興味をかきたてることはできません。
読者の心をとらえ、お金を払ってでも読みたいと思わせるには、言い換えれば高い商品価値をもつには、そこに構成上の様々な工夫が必要になってきます。その工夫とは、一言で言えば上手な“ウソ”なのです。あっと驚くような奇想天外な嘘によって読者の想像力をかきたて、夢中にしてしまえば、これは作者の勝ちということになるでしょう。無論、私小説という作家自身の体験が赤裸々に述べられる小説のジャンルがあり、これこそが純文学であるとする考え方もいまだに根強いのですが、ここではこの問題に深く立ち入ることはいたしません。
中学受験をむかえる小学生たちの関心はなんでしょうか。受験勉強はともかくとして、やはり友情や友だち関係が大きいでしょう。しかし、彼らに単純な仲好し子好しの物語を読ませても乗ってくるはずはありません。そんな紋切り型のストーリーで懸賞に応募しても百戦百敗です。
読者の興味を引こうと思ったら“ひねり”が必要です。たとえば「仲間はずれ」。自分の誕生パーティで、招待した友人たちが途中で帰り始める。どこへ行くのかと思ったら、クラスで一番背が高くて美人で、そして勉強ができる女の子の家だった…。誰しも仲間はずれに対する恐怖心は持っています。ですからこの展開は人ごとではないのです。そこでついこの先はどうなるの…?となってしまう。
[対策]
友情からの疎外、それが逆に友情の大切さを教える。
友だちから仲間はずれにされる悲しみ。クラスの友だちとうまくとけ込めない悩み。しかし自分の存在は認めて欲しい。認められるにはどうすればよいのだろう…。子どもの世界とはいっても、そこには大人の世界となんら変わらないどろどろした人間関係の葛藤があります。
少年少女向けの物語の場合、基本的な主題の多くは友人関係とりわけ友情の大切さです。その友情の大切さをうったえようとする場合、構成上の工夫として、あえて友情から疎外されたスケープゴートを仕立てる場合が多いのです。そして、この友情からの疎外を通して、逆説的に友情の大切さが強く読者に意識されます。
このような逆説的な図式を頭に入れておけば、登場人物の心情に関する論述においても、表面的な把握にとどまらず、人間関係の深層と作者のねらいとを的確に解答できるはずです。